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コォヒィの文学小話

都内大学に通う国文学生が、自身の読書の記録を中心に、「本」に関する話題を書いています。

台風が発生したのでコロッケの話をしよう(菊池寛「真珠婦人」)

本日四月二十六日、フィリピンの東で台風が発生したそうです。

www.tenki.jp

 

今回は進路的に日本には来ないようですが、それにしても随分早く発生したものです。五月雨も梅雨も通り越してしまってます(笑)

 

台風と言えば、昔から台風の時はコロッケと言います。

元ネタはネット掲示板でのやり取りだったそうで、何だか現代を象徴するかのような文化ですが、それにしてもコロッケとは古風な……(笑)

matome.naver.jp

 

しかし、現在では古風に思えても、コロッケが日本に来た明治から大正の頃は、むしろハイカラで、高価なものとされていました。コロッケが今の様に庶民のおかずの定番になるのは、昭和になってからだったようです。

私はコロッケが大好きで、外食の際もしばしば頼むのですが、やはり高くてもコロッケに出せるのは五百円くらい、という感じです。

 

それにしても、コロッケについて書かれた作品って殆どないですよね。

ぱっと思い浮かぶのは、大正十七年に大ヒットしたという「コロッケの唄」。この歌の一番は、次のようなものです。

ワイフ貰って、嬉しかったが、いつも出てくるおかずはコロッケー

今日もコロッケ―、明日もコロッケ―、是じゃ年がら年中(ゲープ)コロッケ―

「コロッケの唄」は、コロッケが高価なおかずとされていた当時の歌ですので、まぁ”ぜいたくな悩み”な訳ですが、過ぎたるはなんとやら。

一つ心配なのは、毎日コロッケばかり食べていたら”生活習慣病”になっちゃうよ?ということですかね(笑)

 

さて、「コロッケの唄」は七番までありますが、二番は次の通りです。

亭主貰って、嬉しかったが、いつもチョイと出りゃめったに帰らない

今日も帰らない、明日も帰らない、是じゃ年がら年中(マ随分だワ)留守居番

 ご亭主は仕事で忙しいのか、それとももしや外に女性を……?

もし浮気をしていたとして、それが奥さんに見つかったら大変です。コロッケばかり作る奥さんですから、恐らく復讐にもコロッケを使うはず。

 

復讐のコロッケ、そう、”たわしコロッケ”です。

二〇〇二年フジテレビで放送されたドラマ「真珠婦人」に出て来る衝撃的なコロッケ。ただ、原作の菊池寛真珠婦人」には、この”たわしコロッケ”は出て来ません。ドラマ版の脚本を手掛けた中島丈博のオリジナルです。

 

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全く関係ない所でもう一つ。私が小学生の頃、「コロコロコミック」で「コロッケ!」という漫画が連載されていました。

主人公コロッケの必殺技は”ハンバーグー”、当時大好きな漫画でしたが、今にして思えば、既にこの頃から〈小説(漫画)×料理〉趣味があったのかもしれません(笑)

 

さて、その「コロッケ!」のアニメが、なんと今YouTubeで無料配信されています。

www.youtube.com

よろしければ!

 

 最近ではレンジで温めるだけでそれなりに美味しいコロッケが食べられますが、冷凍食品のコロッケって、何だかホクホク感が薄くて、どれもペースト的なんですよね。

どこかのメーカーから、ホクホク感を売りにした冷食コロッケが出てくれることを期待しています(笑)

 

林檎酒を飲ませてやろうか(太宰治、梶井基次郎の酒)

太宰治に「津軽」という作品があることは有名です。簡単に言えば「津軽風土記」とでも言える作品で、作中の描写は、太宰の眼を通した津軽の様々な面が描かれております。

 

この「津軽」のごく最初の方に、次の様な場面が出て来ます。

 

「リンゴ酒でなくちやいけないかね。日本酒も、ビールも駄目かね。」と、N君は、言ひにくさうにして言ふのである。
 駄目どころか、それはリンゴ酒よりいいにきまつてゐるのであるが、しかし、日本酒やビールの貴重な事は「大人おとな」の私は知つてゐるので、遠慮して、リンゴ酒と手紙に書いたのである。津軽地方には、このごろ、甲州に於ける葡萄酒のやうに、リンゴ酒が割合ひ豊富だといふ噂を聞いてゐたのだ。

 

津軽は林檎で有名な青森県の地域の一つです。”つがる”、”サンつがる”という品種もあります。

 

ここでN君が言うように、太宰には何となく甘い酒は似合いません。ビールや日本酒もやや馴染まず、私としてはウイスキーを呷ってそうだな、という印象があります。

何といっても、太宰は無頼派の代表格ですから(笑)

 

さて、今回の記事のタイトル、実はある詩人の言葉にちなんだものです。

分かりますかね?

 

 

……はい、実はこれ、梶井基次郎の「葡萄酒を見せてやろうか」という言葉をいじったものです。出典は三好達治梶井基次郎」。「測量船」などが有名でしょうか。

 

「冬の日」はさういふ彼の蝕まれた青春、通学に耐へない位の悪い健康状態で書かれた。当時私たちは、麻布の狸穴に、一つ家の二階に、二部屋きりのその二部屋を占領して暮らしてゐた。ある晩彼が唐紙越しに私を呼んだ。

――葡萄酒を見せてやらうか……美しいだろう……

さう言つて、彼は硝子のコップを片手にささげるやうにして電燈に透して見せた。葡萄酒はコップの七分目ばかりを満して、なるほど鮮明で美しかつた。それがつい今しがた彼がむせんで吐いたばかりの喀血だったのは、しばらくして種を明かされるまで、ちょつと私には見当がつきかねた。

三好達治梶井基次郎

 

何とも死の香り豊潤な葡萄酒ですね……そういえば、夏目漱石の末期の水、これも葡萄酒であったそうです。

 

アサヒに酒に”ニッカ アップルワイン”があります。ニッカと言えばウイスキーですが、ウイスキーを開発、販売する以前は、リンゴジュースを製造していたそうで、それが”アップルワイン”の製造に繋がったそうです。

 

甘いですが、ちょっと癖のある味わいで、私は好きです。スーパーなどではあまり見かけませんが、普通に販売しているようです(私はドンキーホーテで買いました)

 

このボトル、素敵ですよね。

 

 

”ニッカ アップルワイン”のホームページによれば、一九三八年九月に誕生したそうですから、太宰が飲んでいても不思議ではありませんね。

 

今回はロック、ソーダ割の二通りで飲んでみましたが、ソーダ割にした方が美味しかったです。基本梅酒などはロックで飲んだ方が美味しく感じるたちでして、我ながら不思議でした(笑)

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太宰治津軽」には、他にも美味しそうな食べ物、美しい風景などが出て来ます。青空文庫にありますので、よろしければどうぞ。

太宰治 津軽

夏目漱石門下はカステラが大好き?

相変わらずブログの更新が覚束ないです(笑)

一か月以上のご無沙汰になってしまいました。何とかしたいものです……。

 

さて、本日四月二十日は、内田百閒の命日です。これは通称「木蓮忌」と言いまして、百閒の「木蓮や塀の外吹く俄風」という句に由来します。

 

それにしても、文学忌というのは不思議なもので、例えば江戸川乱歩の命日は「柘榴忌」と言い、これは乱歩の「柘榴」という作品に由来するわけですが、この「柘榴」の評判は決して高いものではありません。

百閒にしましても、他に有名な作品は沢山あります。

 

文学忌がどのように命名されるのか、これ、以前から気になっているのですが、謎のままです(笑)

 

さて、百閒と言えば、夏目漱石の門人の一人。

漱石については過去に何度か取り上げています。例えばこの記事など。

hontocoffee117.hatenablog.com

 

ここでは漱石の「こころ」の「チョコレートを塗った鳶色のカステラ」を紹介しています。

 

漱石とカステラ……そういえば、漱石門下にはカステラ好きで有名な芥川龍之介がいますね。

百閒も漱石門下の一人で、芥川と親交がありました。百閒には芥川について書いた文章が幾つもあり、次のような本も出ています。

 

私の「漱石」と「龍之介」 (ちくま文庫)

私の「漱石」と「龍之介」 (ちくま文庫)

 

 

そんな百閒ですが、実は彼にもカステラについて書いた文章があります。

百閒が入院した際に、お見舞いの品としてもらったカステラについて書いたものです。

 

平べったい木の箱であって、洋服屋が誂えの洋服を入れて来る函を二つ合わせたよりもっと広い。蓋をあけて見たら、中はカステラで一ぱいに詰まっているので驚いた。

内田百閒『船の夢』

 

お見舞い品だからと相手が気を遣ったのでしょうが、過ぎたるは及ばざるがごとし。百閒はこのカステラを「不気味」と評しております(笑)

 

 そういえば、今流行りの「夜は短し歩けよ乙女」の森見登美彦の作品にも、印象的なカステラが出てきますが、これは後日、なるべく早くまとめて、公開しようと思います(笑)

作家と天ぷら①ふやけた衣のうまさ……

約1週間ぶりの更新となってしまいました。最近少々ばたばたしておりまして、出来る限り2,3日に一度は更新を、とは思っているのですが(笑)

 

さて、3月23日は、日本を代表する食通、北大路魯山人の誕生日です。その他、「天才と狂人の間」で直木賞を受賞した杉森久英服部達、遠藤周作らとともにメタフィジック批評を提唱した村松剛なども、この日に生まれております。

 

杉森も、実は食に関する本を書いております。そもそも、杉森で最も有名な本は、「天皇の料理番」でしょうか(笑)

天皇の料理番 (上) (集英社文庫)

天皇の料理番 (上) (集英社文庫)

 

 

服部は〈第三の新人〉に対して、同時代人として最も適切な批評を行った人物ですので、〈第三の新人〉に興味のある方は、一度お読みになることをお勧めします。

われらにとって美は存在するか (講談社文芸文庫)

われらにとって美は存在するか (講談社文芸文庫)

 

 

 

さて、今回は魯山人と食について紹介しようと思いますが、食通で有名な魯山人(中でも納豆の話など)ですので、食に関する文章の多い事、どれにしようかと目移りしてしまいます(笑)

 

ですので、何かとっかかりはないかと少々調べたところ、毎月23日は、どうやら天ぷらの日であるとか。

元は7月23日に制定されていたそうですが、現在では毎月の記念日となっているそうです。

www.soba-udongyoukai.com

 

 

そういえば、先日国文学生の聖地、神保町に行きました。

神保町で天ぷらと言えば、私が直ぐに思いつくのは、「はちまき」「いもや」の二軒です。丁度、「はちまき」の方向に用事があったので(しかし食べる時間はありませんでした、無念です)、せめてと店舗の写真を撮ってきました。

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「はちまき」と言えば、何といっても江戸川乱歩ゆかりの店……、店の前に置かれていた名刺にも、しっかりとその旨が書かれています(笑)

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話がそれました(笑)

さて、魯山人の天ぷら話として、「料理メモ」、そして「てんぷら茶漬け」を紹介します。

 

まずは「料理メモ」から。こちらは「料理メモ」の名の通り色々なレシピが書いてありまして、その一つとして天ぷらが出て来ます。

 

*材料、種第一。えびが多いが、えびは養殖でなく天然のもので大きなものは不可。大きいのは見かけだおし。一匹七、八匁か、それ以下。
*揚げたて第二。てんぷらは揚げてすぐ食べなくては種がよくても味は落ちる。
*油第三。種がよくても油がまずくては不可。

*油は胡麻の古い貯蔵品が味がこなれていていい。

 

ちなみに、食べ方としては、「てんぷらに新鮮なだいこんおろし、これにしょうゆをかけて食べれば俗なだしに優る」と述べております。

 

ここで魯山人は「だし」を否定し「しょうゆ」を推している訳ですが、個人的には疑問が(笑)。というのも、「しょうゆ」って、中々主張の激しい調味料です。天ぷらの味わいなど吹っ飛んでしまうのでは……?と、思います(笑)

 

さて、お次は「てんぷらの茶漬け」です。魯山人って何故か茶漬けの話が多いんですよね(笑)。

 

揚げたてのてんぷらを茶漬けにするのはもとより差支えないが、本来、てんぷらの茶漬けは古いてんぷらの利用にある。 昨日の残りのてんぷらだとか、一旦、冷え切ったものを生かして食う食い方である。それにはまず火鉢に網を載せ、一旦、てんぷらを火にかける。いくぶん焦げができるくらいに火をあてる。それを熱い飯の上に載せ、塩を適宜にかけるのである。

(略)

ただ、ここに注意すべきは、てんぷらの茶漬けは甘いものを嫌うが故に、てんぷらのつゆをかけてはならぬ。必ず生醤油か、塩をかけるべきである。

 

こちらは非の打ちどころがありませんね(笑)。ただ、個人的には、少しだけ山椒をふりたいですかね。

 

さて、揚げたての天ぷらの衣は軽やかで、小気味が良い。サクサクと食べるのは何とも乙なものですが、タイトルで述べた通り、天ぷらそば、天丼、天むす、そして「天ぷらの茶漬け」のように、つゆや出汁を吸い込んで、ふやけた天ぷらの味わいも、また格別なものです。

理想としては、揚げたてをそのまま食べる際の衣は軽く、天ぷらそばなどつゆや出汁を吸い込ませることが前提の場合には、厚い衣の天ぷらであって欲しいです。衣がはがれて浮いている……なんてことがあると、少し興ざめしてしまいますから(笑)

 

魯山人「料理メモ」「てんぷらの茶漬け」は、青空文庫で読むことが出来ますので、よろしければどうぞ。

北大路魯山人 料理メモ

北大路魯山人 てんぷらの茶漬け

作家と海老フライ

本日3月16日は、作家の三浦哲郎の誕生日です。三浦は1960年に「忍ぶ川」芥川賞を受賞し、その後も「拳銃と十五の短編」など、優れた作品を残しております。

この「忍ぶ川」は、”つまらない”と揶揄されがちな芥川賞においても中々の名作です(ところで、芥川賞作品には何だか”川”や”河”が印象的な作品が多数あるような気がします)。

 

忍ぶ川 (新潮文庫)

忍ぶ川 (新潮文庫)

 

 

その他、「タイムスリップ・コンビナート」芥川賞を受賞した笙野頼子、「廃墟に請う」直木賞を受賞した佐々木譲も、本日が誕生日です。

 

さて、実は三浦の作品には、多くの印象的な食の描写が出て来ます。有名なのは、「とんかつ」でしょうか。寺に入門した子供と一年振りに再開した母親、そして宿の主人の風貌を、”とんかつ”で極めて具合よく表している佳品です。

さて、「とんかつ」は教材にもなっています。三浦の作品は癖がなく、何より感情描写が豊かでありますから、採用しやすいのでしょう。

 

今回は、三浦の作品から、同じく教材にもなっている「盆土産」に描かれている”えんびふらい”、つまり”海老フライ”をご紹介します。

 

ところで、”海老フライ”を描いた文章というのを、私は「盆土産」の他に知りません。その意味でも貴重ですが、何より、この”海老フライ”の描き方、実に見事と言うほかありません。

 

揚げたてのえびフライは、口の中に入れると、しゃおっ、というような音を立てた。かむと、緻密な肉の中で前歯がかすかにきしむような、いい歯ごたえで、この辺りでくるみ味といっているえもいわれないうまさが口の中に広がった。

三浦哲郎「盆土産」)

 

さて、久々に鎌倉の話を。

日本には数々のご当地グルメがありますが、鎌倉のご当地グルメ”鎌倉丼”なるものがあります。これは”海老フライの卵とじ丼”らしく、何故”鎌倉丼”と呼ぶかと言えば、昔鎌倉では大量の海老が獲れたからとのこと。

hamarepo.com

 

三浦「盆土産」、何故か全文公開しているサイトがありました。短篇なので、宜しければどうぞ。実に”海老フライ”欲求を刺激してくれる作品であります(笑)

『盆土産』

 

ちなみに、「盆土産」は以下の文庫本に収録されております。

冬の雁 (文春文庫)

冬の雁 (文春文庫)

 

 

文学者とサンドイッチ

本日3月13日サンドイッチの日です。これは、”3”に”1”が挟まれていることから制定されたそうです。

ちなみに、日本にはもう一日”サンドウィッチの日”がありまして、それは11月3日です。こちらはサンドイッチチェーン店「神戸サンド屋」(神戸屋と関係はあるんですかね?)が制定してもので、サンドイッチの生みの親として有名なサンドウィッチ伯爵(第4代サンドウィッチ伯ジョン・モンタギュー)の誕生日であり、”11(いい)3(サンド)”の語呂合わせから制定されたそうです。

d.hatena.ne.jp

 

 

そういえば、サンドイッチとサンドウィッチ、果たしてどちらが正しいのかということについてしばし(?)話題になりますが、これはどちらでも良いそうです

要は”カンマ”か”コンマ”か、”ビニル”か”ビニール”かみたいなものらしいです(情報源は「NEVERまとめ」ですが……(笑))。

matome.naver.jp

 

 

まぁ3月13日を”サンドイッチの日”とする上では、サンドイッチの方が都合が良いですかね(笑)

 

さて、先日村上春樹の作品にはよくサンドイッチが出て来ると書きました。

hontocoffee117.hatenablog.com

 

 

そして勿論(笑)、「騎士団長殺し」にも出て来ました。

hontocoffee117.hatenablog.com

 

 

「騎士団長殺し」に出てきたのは”ハムとチーズのサンドウィッチ”でした。

そういえば、村上はサンドウィッチと書くみたいですね。

 

さて、今日はサンドイッチの日ということで、村上以外の文学者とサンドイッチに関する話をしようかと思います。

 

一人目は、詩人の草野心平です。今ではあまり読まれなくなってしまった詩人かもしれませんが、非常にユーモラスかつユニークな詩を作る人で、私の好きな詩人の一人です。

例えば、このような詩があります。

 

 

 

草野心平「冬眠」

 

嘘じゃないですよ。本当にこれだけです(笑)

 

まぁ、勿論これは手遊びのような詩でしょう(私は大好きですが)。もっと重量感のある詩も沢山書いております。

 

さて、この草野、実は食通として名高い。何せ、天下の講談社文芸文庫から出ている草野の作品は、その草野の食に関する随筆などをまとめた「口福無限」というものです。

しかし、これが傑作なんです。日常食から酒の肴まで、実に幅広く書いてあります。

 

口福無限 (講談社文芸文庫)

口福無限 (講談社文芸文庫)

 

 

そんな食通草野の随筆「ばらサンドイッチ」には、実にユニークなサンドイッチが出て来ます。

 

あやめサンド、ふじサンド、ばらサンド、つつじサンド、そんなサンドイッチはレストランのメニューにはないが私の頭の中にはある。あるだけではあくて私自身が作って食べた経験もある。手っ取り早く言えば、たとえばハムサンドのハムの代わりにあやめや藤の花や、またはレンゲ、ツツジの花びらをはさんだサンドイッチである。

それらは色どりも美しく、味も淡く甘く、そしてサラッとしている。

 

こう書かれると、何だか試したくなりますね……。勿論道端の花を抜いて食べたら腹を壊す危険がありますから、花屋などで購入したもので、ですが(笑)

 

さて、もう一人は、村上同様現代作家で、芥川賞選考委員も務める人気作家川上弘美です。私は川上作品はあまり好みではありません。センセイの鞄は嫌いではないですが(笑)

 

川上のサンドイッチは、短編集「ざらざら」の中に出て来ます。しかも、詳しいレシピまで。えらい拘りようです(笑)

 

それで、桃サンドを作ることにした。

オレンジ色の冷蔵庫の野菜室を、あたしは開ける。よく熟れた桃を、そっととりだす。指でもって皮をていねいに剥く。熟れているので、きもちよく、大きく、剥ける。きってゆく。種は残し、たっぷりとおつゆを含んだ果肉が幾片かできたら、こんどは食パンを冷凍室からとりだす。いつものようにトーストしないで、レンジでチンする。

ほどよくふわふわになった食パンに、バターだのジャムだのはいっさいぬらないで、ただきりとった桃をのせる。ぎっしりのせたら、食パンを半分におる。

 

ふわふわの食パンがつゆを吸い込んで、ややゆるくなった所にかぶりつく。想像すると、とてもお腹が空いてきます(笑)。

これは私の解釈ですが、この「桃サンド」は、桃缶の桃ではダメなんでしょうね。

 

ざらざら (新潮文庫)

ざらざら (新潮文庫)

 

 

 

それにしても……、何だか無性に、サンドイッチが食べたくなってきました(笑)

カレーと作家たち⑤愛のカレーライス(阿川弘之「カレーライスの唄」)

 カレーと作家たち④はこちらです。

hontocoffee117.hatenablog.com

 

毎週金曜日はカレーの日です。

最近は他に話題がありましたので更新出来ていませんでしたので、久しぶりの「カレーと作家たち」となります。

 

さて、そもそも何故金曜日がカレーの日なのかと言えば、以前紹介しました通り、海軍で毎週金曜日にカレーが振る舞われた(今もでしょうか?)ためです。

 

海軍に所属していた作家と言えば、芥川龍之介であったり、内田百閒であったり、豊田穣であったり……と、まぁ何人かあげられますが、その海軍での経験を作品にし、そして文学的功績として認められている作家と言えば、阿川弘之をおいて他にはいないでしょう。

 

阿川は志賀直哉門下の一人で、文学史的には〈第三の新人〉に分類されています。遠藤周作にとってのキリスト教小島信夫にとってのアメリカ、吉行淳之介にとっての娼婦、庄野潤三にとっての「家庭」が、阿川における海軍と言えるかもしれません。

 

私は軍記物にはあまり関心がないので、阿川の作品は殆ど読んだことがありません。また、阿川は志賀門下なだけあって、私小説も書いていますが、こちらもあまり良いとは思えません。

阿川の労作「志賀直哉」は、志賀に興味がある人にとっては嬉しい作品ですが、それ以上でも以下でもないかと。

 

しかし、阿川の文学の多様さには、少なからず尊敬の気持ちを抱いております。何とも器用な作家と言いますか……。

今回紹介する「カレーライスの唄」も、そんな阿川の器用さが垣間見える作品です。これは、お正月にドラマでやったりしたら受けそうな作品です。先日解散したSMAP中居正広が主演をしている「味いちもんめ」に近い雰囲気の作品と言えば、分かり易いでしょうか?

 

この作品は、カレーで言えば超甘口の作品で、”バーモントカレー”でもまだ辛い。強いて言うなら”カレーの王子さま”くらいの甘々作品です(笑)

www.sbfoods.co.jp

 

ですが、だからこそ気楽に読めて良いとも言えます。こういった味わいは、最近の大衆文学にはないものですね。

 

「カレーライスの唄」は、現在ちくま文庫版が最も入手しやすい媒体であるかと思われます(ちくま文庫は、獅子文六「てんやわんや」「コーヒーと恋愛」であったり、三島由紀夫「命売ります」であったりと、こういった著名作家の大衆物を売り出すのが巧いですね)。

カレーライスの唄 (ちくま文庫)

カレーライスの唄 (ちくま文庫)

 

 

しかし、今回は講談社文庫版を入手しましたので、こちらで読みました。講談社文庫版では、上下巻構成となっています。

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さて、作中で主人公六助とヒロイン千鶴子(これって阿川佐和子はモデルなんですかね?(笑))が開店するカレー屋「ありがとう」のウリは、カレーの真骨頂である”辛さ”です。作品に登場する作家大森先生は、このカレーを次の様に評しております。

 

「なにしろこの店のカレーは、おそろしく辛い」

と、大森先生は書いていた。

「食べ終わって、店を出て電車に乗ったころ、まだハアー、ハアーッと口の中に辛さが残っているが、同時に、そのころになって何とも言えぬ美味しさが感じられて来る。『ありがとう』のカレーの辛さには、ふたりの若い経営者のまごころがこもっている。にんにくを豊富に使い、始めはそれが不評を買うのではないかと心配だったというが、このごろ、この店のカレーの味を認める常連が次第にふえて来ている」

阿川弘之「カレーライスの唄」

 

ところで、皆さんはカレーに何かトッピングを付けたいと思いますか?

トッピングで有名なのは、”ココ壱番屋のカレー”でしょうか。カレー単品ではなく、トッピングでカレーをカスタマイズすることが前提となっているカレーです。

 

カレーのトッピングの定番と言えば、やはり豚カツだと思います。しかし、私としましては、カレーのトッピングで一番嬉しいのは、実はコロッケです(笑)カツカレーも美味しいとは思いますが、何だか一体感がない。その点コロッケは、非常に良く馴染んでくれますから。

 

さて、海軍カレーは何種類かありますが、その中でも有名なのは、やはり”横須賀海軍カレー”でしょう。通常あまりお目にかかりませんが、「ポンパドウル」というパン屋で、この”横須賀海軍カレー”を気軽に、そして安価に食べることが出来ます。

 

最近ではコンビニのパンも美味しくなってきましたが、カレーパンはまだ暫くは、パン屋には敵わないんじゃないか……と、ここのカレーパンを食べるたびに思ってしまいます(笑)

 

勿論金曜日以外も売っていますので、よろしければどうぞ。

商品のご紹介|横浜元町で生まれた焼き立てパンのお店 ポンパドウル