コォヒィの文学小話

都内大学に通う国文学生が、自身の読書の記録を中心に、「本」に関する話題を書いています。

カストリ焼酎飲む?飲まない?

世間の漠然としたイメージとして、作家、特に文豪は私生活に問題があるというイメージがあるのではないでしょうか。このような悪評判の筆頭といえばやはり太宰治でしょうか。

 

しかし、この太宰をいじめにいじめた人物がいます(笑)

「汚れっちまった悲しみに」や「サーカス」で有名な詩人中原中也がそうでして、中原の酒癖の悪さは大変有名でした。太宰をいじめていた話は有名(しかし、太宰は中原を尊敬していたため、いじめられても中原の所へ行っていたそう)ですが、もっと凄いのが、文芸評論家として有名な中村光夫をビール瓶で殴りつけたという話。もはや傷害罪の域です。

 

それにしても太宰って、調べれば調べるほどマゾ男だなぁと思うのは私だけですかね?(笑)

 

さて、太宰は戦前、戦中、戦後と人気がありますが、特に戦後は織田作之助坂口安吾柴田錬三郎らとともに無頼派として認知されており、一層名を高めました。

この中で安吾が、ユニークな会を催していました。「カストリを飲む会」というものです。

 

カストリとはカストリ焼酎のことで、簡単にいってしまえば焼酎の粗悪品みたいなもの。戦後の物資不足の時期に爆発的に普及しました。その結果、カストリは粗悪品のイメージとイコールにもなりました(カストリ雑誌などがその例)。

 

安吾はこのカストリ焼酎を愛飲していたようで、「ちかごろの酒の話」や「太宰治情死考」に詳しく書いてあります。

ちなみに「太宰治情死考」によれば、太宰はカストリは飲まなかったようです。

 

坂口安吾 太宰治情死考

坂口安吾 ちかごろの酒の話

 

さて、太宰といえば破滅型私小説の作家として評価されていますが、この対極に位置するのが、調和型私小説の作家、つまり大きくいえば志賀直哉系列の私小説の作家です。その代表的作家の一人に尾崎一雄という作家がいます。私小説作家ではじめて芥川賞を受賞しており、そして、数少ない”面白い芥川賞作品”を書いている作家でもあります。

 

ちなみに受賞作は「暢気眼鏡」その他です。

暢気眼鏡・虫のいろいろ―他十三篇 (岩波文庫)

暢気眼鏡・虫のいろいろ―他十三篇 (岩波文庫)

 

 

この尾崎の作品に「カストリを飲まざるの辯」というものがあります。「山椒魚」で有名な井伏鱒二と酒を飲んだ際のエピソードを通し、戦後社会を生きる上での尾崎の姿勢が語られる作品です。『尾崎一雄全集』第三巻に収録されております。

 

カストリ焼酎どころか、私は焼酎自体苦手なのであまり飲まないのです、いつか飲んだ柚子焼酎は大変美味しかったのを覚えております。あれはどこのだったか……もう一度、飲んでみたいものです(笑)

ブログ開設から半年が経ちました

本日7月18日をもちまして、当ブログが公開半年を迎えました(メールが来て初めて気づきました(笑))

 

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最初は読書記録や書評などを書いていこうと思っていたのに、気づけばブログの内容は食べ物のことばかり。文学部生としては若干恥ずかしさにいたたまれないような思い(?)もあります。

 

ふと記事を見返したら、前回の芥川賞直木賞について適当なことを書いていました。そういえば明日19日は芥川賞直木賞の発表日です。はたして誰が授賞するのやら、一応授賞作は文学部生の嗜みとして読む予定です(笑)

 

www.bunshun.co.jp

 

さて、これからブログを書いていくうえでの抱負としましては、初心を思い出し真面目な内容も書いていきたいということを掲げておきます。

 

(しかし、どうなることやら……。)

 

また、そもそもブログを始めた理由の一つに、ブログを読んでくださった方と本の話をしたいという思いがありました。

はてなブログの仕様で返信を上手く行えませんが、コメントは拝見しております。ぜひぜひ皆さんの好きな本や作家、またはこんなすごい文章があるなど、色々教えていただければと思っています。

 

今後とも、よろしくお願いします!

毎月の11日は……

7月11日はセブンイレブンの日です。巷で話題となっております……ってまぁ言うまでもないですかね(笑)

元々セブンイレブンの営業時間は午前七時から午後11時まででした。これがそのまま店名の由来となっている訳です。これもまた有名ですかね?

 

ここから話を広げ(笑)、ではローソンやファミリーマートの店名の由来は?と言いますと、以外と知られてないかも知れません。

ローソンは創業者の名前から、ファミリーマートは営業理念が由来となっています。

 

これらコンビニを題材とした作品として有名なの作品として、芥川賞受賞作である村田沙耶香コンビニ人間」があります。村田さんはコンビニバイトのベテランだそうで、その体験が元になっているそうです。

ちなみにこの「コンビニ人間」のサイン会の会場はセブンイレブンだったそうです。

 

www.oricon.co.jp

 

さて、コンビニから離れまして(笑)

毎月11日はめんの日だそうです。由来は11はめんを並べたように見えるからで……なんでもありって感じですね(笑)

(御察しの通り、11月11日もめんの日です)

 

全国製麺協同組合連合会

 

ただ全国製麺協同組合連合会で紹介されているように、「麺を食べる姿がつるつる(鶴)、かめかめ(亀)」……こういう洒落は嫌いではないです(笑)

 

日本の麺と言えば、うどんと蕎麦のツートップになるのでしょうけれど(ラーメンは日本料理であるという主張は無視します)、夏の麺と言えば、やはり素麺かと思います。

実は先日7月7日七夕の日は、素麺の日でもありました。

www.soba-udongyoukai.com

 

皆さん食べましたか?(笑)

 

素麺もうどんと同様に小麦粉から作られている訳ですが、麺に油などを塗るため、あの独特の風味が出ている訳です。巷では素麺は実はカロリーが高いと話題ですが、この辺りが原因になっているのかもしれません。

 

素麺はうどんや蕎麦に比べどこか格下に見られている気がします。そのため文学者が話題にしているのを見たことがありません。

 

 ただ、宮沢賢治の一節に、何故か素麺が登場していました(笑)

 

 

げにかしこにはいくたび
赤き砂利をになひける
面むくみしつ弱き子の
人人の背後なる板の間に座りて
素麺をこそ食めるなる
その赤砂利を盛れる土橋は
楢また檜の暗き林を負ひて
ひとしく雨に打たれたれど
ほだのけむりははやもそこに這へるなり

 

宮沢賢治「饗宴」

 

うーん、こういう詩の良さが未だに分からないです(笑)

 

 

コンビニ人間 (文春e-book)

コンビニ人間 (文春e-book)

 

 

 

 

サラダ記念日にサラダを食べる

 

『この味がいいね』と君が言ったから七月六日はサラダ記念日 

俵万智「サラダ記念日」)

 

詩人や歌人は作家に比べて作品が話題になることや売れることが少ないため、知名度が低いです。金子光晴山之口獏などは切実に金が欲しいことを訴えております(笑)

と言っても、金子や山之口などは、詩人の中でも売れた方ですけどね。

 

しかし俵万智と「サラダ記念日」は、知名度において他の詩人とは一線を画しております。特に現代の詩人や歌人で、この人のように作品と作者がそろって有名な方は、谷川俊太郎茨木のり子などに限られ、本当に少ないのではないでしょうか。ちょっと文学通になれば、ここに大岡信鮎川信夫などが加わるのかもしれません。

 

ちなみに「サラダ記念日」は、下世話ですが数字で言えば訳二百万部を超える売り上げを叩き出しております。又吉直樹の「火花」よりも低いと思う方がいるかもしれませんが、通常五千部売れればヒットしたとされる詩集や歌集の現実を踏まえると、又吉「火花」より文学史的に遥かに衝撃的な出来事です(まぁ売れれば名作という訳ではないですが(笑))

 

そういえば、近頃最果タヒという方が人気だそうですが……まぁ私には分からない良さがあるんですかね(笑)

 

俵「サラダ記念日」は詩や短歌に興味がない方でも知っている有名な短歌です。筒井康隆はこれを題材に返歌集「男たちのサラダ記念日」や「カラダ記念日」というものを作りました。

例えば最初に挙げた短歌への返歌は、次のようなものです。

 

六月の花嫁は皆幸わせになれると知った七月六日

筒井康隆「男たちのサラダ記念日」

 

まぁあまり良いとは思いませんが(笑)

 

さて実はこの「サラダ記念日」ですが、創作背景には面白い事実があります。

 

hatenanews.com

 

ここにあるように、実際には恋人に褒められたのはサラダではなく鶏のから揚げだったそうです。鶏のから揚げでは語呂も悪いですし、歌の雰囲気も変わってしまいますねぇ……サラダが、いいかなぁ(笑)

 

さて、「サラダ記念日」のサラダはただサラダとされており、どのようなサラダかは限定されていません。ですから私たちは七月五日のサラダ記念日を祝う際、好きなサラダを食べていいわけです(笑)

 

私の最近のブームはタイ料理の春雨サラダ、ヤムウンセン。ナンプラーパクチーが効いていてとても美味しいんですよね。ヤムウンセンはコンビニでも売っていて、しかも中々美味しいので、重宝しております。中々ナンプラーパクチーを手に入れることはできませんので(笑)

サラダ記念日 (河出文庫―BUNGEI Collection)

サラダ記念日 (河出文庫―BUNGEI Collection)

 

 

男たちの「サラダ記念日」

男たちの「サラダ記念日」

 

 

 

森鷗外とビール

本日はフランツ・カフカの誕生日です。ドイツ文学の代表的な作家ですが、実は現在のチェコに生まれております。

ちなみに生年である一八八三年の二月二十日は、作家志賀直哉の誕生年でもあります。志賀には「釜揚げうどん」という随筆がありますが、そういえば昨日七月二日はうどんの日でした。

 

うどんと言えば、最近話題の将棋の藤井四段がよく食べていました。

www.huffingtonpost.jp

 

残念ながら、七月二日のオーダーは冷やし中華でしたが(笑)

 

さて、チェコとドイツ、この二つを聞いたら、カフカよりもまず想像してしまうものがあるかと思います。例えば今日のような日差しがきつく暑いに日にピッタリな……

 

そう、ビールです(笑)

 

チェコに疑問を持たれる方がもしかしたらいるかもしれませんが、実は世界で一番ビールを消費している国はチェコなんですよね。また、そもそも現在主流のビールが誕生したのもチェコであるそうです。

 

allabout.co.jp

 

さて、日本の作家でビールといえば、多分一番イメージされるのは村上春樹かと思いますが(笑)、日本の作家でドイツと関係が深い作家といえば、やはり森鷗外が一番イメージされるのではないかと思います。ドイツ三部作「舞姫」「うたかたの記」「文づかひ」は有名です。

 

この中の「うたかたの記」ではビールを飲む場面が出てきます。

 

 かく語る処へ、胸当につづけたる白前垂掛けたる下女、麦酒の泡だてるを、ゆり越すばかり盛りたる例の大杯を、四つ五つづつ、とり手を寄せてもろ手に握りもち、「新しき樽よりとおもひて、うなりぬ。許したまへ」とことわりて、前なる杯飲みほしたりし人々にわたすを、少女、「ここへ、ここへ」と呼びちかづけて、まだ杯持たぬ巨勢が前にも置かす。巨勢は一口飲みて語りつづけぬ。

 

ビールを視覚的に表現する際、何よりもその色と泡が重要になるかと思われますが、ここではその泡がしっかりと描写されています。

泡といえば、そういえば作品名「うたかたの記」の「うたかた」は泡……もしかして駄洒落ですかね?(そんなわけはない)

 

それにしても、鷗外といえば甘党というイメージがあり、酒を飲むというイメージはありませんが、留学時代の日記を見ると、むしろ結構好きだったみたいですよ。

 

森鴎外 うたかたの記

 

ちなみに、こんなアンソロジーがあるみたいです。

収録作家を見てみたら、鷗外の娘の森茉莉がちゃっかりいました(笑)

 

 

文庫に関するあれこれ

本日は獅子文六の誕生日です。獅子文六といえば大衆文学界の大御所というべき存在です。全集もしっかり刊行されております。

 

獅子で近年話題になった作品と言えば、やはり「コーヒーと恋愛」でしょうか。三島由紀夫「命売ります」が話題になったちくま文庫ですが、それに付随した形ですかね。

コーヒーと恋愛 (ちくま文庫)

コーヒーと恋愛 (ちくま文庫)

 

 

ちくま文庫というのは中々ユニークな文庫でして、例えば阿川弘之「カレーライスの唄」であったり、深沢七郎尾崎翠といった通好みの作家の文庫版選集や全集を刊行してみたり、毎月新刊予告には目が離せません(笑)

 

最近私が好きなシリーズは「教科書で読む名作」シリーズでして、例えばこれは三刊行のプロレタリア文学集ですが、葉山嘉樹黒島伝治らの作品が収録されております。

 

 

さて、あまり有名ではないですがユニークな文庫レーベルとして、グルメ文庫なるものがあります。出版社は角川書店でして、主なラインナップは作家の食に関する随筆です。例えば獅子なら「わが食いしん坊」があり、開高健なら「食の王様」や「巷の美食家」、吉行淳之介なら「ダンディな食卓」です。吉行のものは未読ですが、どの随筆をチョイスしたのか気になります。

私が好きな吉行の食に関する随筆はあんぱんや鮭缶の話なので、恐らく入っていないでしょう(笑)

 

文庫本が好きな理由に、その文庫本の趣旨に合わせ、その作家のどの作品を選び、どのような一冊に仕立てたのかという、新年の福袋的な楽しみができるということがあります。

そして安価であり、持ち運びがしやすいこと。単行本の装丁も重厚感があり嫌いではないですが、現代のは昔ほど自由がなく、個性に乏しいですから、あまり私は重視しなくなりました。

例えば文庫本からは離れますが、開高は昔「フィッシュ・オン」を刊行した時、限定30部で装丁に鮭の皮を用いたものを作成したそうです。出久根達郎の「作家の値段」にありましたが、大変貴重で、現在も高値でやり取りされているそうです。私などには到底手が出ません(笑)

文学×教育=豆腐?

奇妙奇天烈なタイトルを付けさせて頂きました(笑)

 

前記事にあるように、私は先日教育実習に行ってきました。

hontocoffee117.hatenablog.com

 

この中で、作家の多くも教職についていたことがあると書きましたが、実は芥川賞受賞者に一人、その生涯の殆どを教職に捧げた作家がいます。その名は長谷健、今では殆ど忘れられた作家となりました、受賞作は「あさくさの子供」と言います。

 

長谷は福岡県出身ですが、浅草で教職についていた時期があり、「あさくさの子供」はその時のことが書かれた作品です。芥川賞にしては特に長いですし、内容も大学の教職の授業で学ぶ理論がそのまま書かれているようで、正直あまり完成度の高い作品とも、面白い作品であるとも言えませんが、日本における教育文学の貴重な足跡の一つです。

 

さて、実は作者である長谷の命日が非常に面白い。世にいう文学忌というやつですが、何と長谷の文学忌は「豆腐忌」といいます(笑)

 

豆腐は長谷健の好物でしたが、師範学校時代に肋膜を患ったこともあり、健康を回復させるための一つの健康食として愛用したようです。

「長谷健文学碑と豆腐忌」堤輝男

 

好物にちなんでつけられた文学忌って、他に例はあるんでしょうか(笑)

豆腐が健康食というのにも何だか……突っ込みどころが満載ですが、非常に印象的なことは確かです。

長谷についての詳細はこちらにあります。

文学と教育のかけ橋―芥川賞作家・長谷健の文学と生涯

文学と教育のかけ橋―芥川賞作家・長谷健の文学と生涯

 

 

さて、教育と文学として有名な話に、灘高校中勘助銀の匙」の授業があります。一時期ニュースでも話題になっていました。

〈銀の匙〉の国語授業 (岩波ジュニア新書)

〈銀の匙〉の国語授業 (岩波ジュニア新書)

 

 

銀の匙」はやや冗長な感もありますが、描写も良く、追想小説として中々の佳品です。作者中勘助漱石門下の一人、と言ってもあまり木曜会に顔は出していなかったようです。これは岩波文庫で何とも言えない存在感を放つ(笑)「迷路」の作者野上弥生子と同様です。

 

そんな中勘助の「銀の匙」に、大変美味しそうな豆腐料理が出てきます。

 

そこにはお手づくりの豆腐がふるえてまっ白なはだに模様の藍がしみそうにみえる。姉様は柚子をおろしてくださる。浅い緑色の粉をほろほろとふりかけてとろけそうなのを と とつゆにひたすと、濃い海老色がさっとかかる。 

食べる描写も秀逸なんですよ。

それをそうっと舌にのせる。しずかな柚子の馨、きつい醤油の味、つめたくすべっこいはだざわりがする。 それをころころと二、三度ころがすうちにかすかな澱粉性の味をのこして溶けてしまう。

 

これは手作りの豆腐で、スーパーやコンビニで売っている安い豆腐とは味わいが違います。冷奴を食べるなら絶対豆腐屋の豆腐というのが私の考えですが、中々良い豆腐屋というのも少なりました。むしろスーパーでちょっと奮発した豆腐の方が美味しかったり……という思いも、最近あります(笑)

 

じめじめして、随分遅くなりましたが梅雨の天気がやってきております。こんな時にはさっぱりとした冷奴が、一層美味しく感じられます。