コォヒィの文学小話

都内大学に通う国文学生が、自身の読書の記録を中心に、「本」に関する話題を書いています。

鎌倉の食べ物と文学①江戸川乱歩

本日は三月三日桃の節句でございますが、まぁ、男性である私には、直接には縁のない行事です(笑)

 

強いて言うなら、昔から何故だか”雛あられ”が好きでして、三月三日は勿論、今でも時々購入して食べております。

素朴な美味しさ言いますか。それに、”雛あられ”って、何だか他に代わりが見つからないお菓子なんですよね。”ポン菓子”ともまた違いますし……。

 

”雛あられ”と言えば、私、先日大学の先輩方と鎌倉に行ってきたのですが、当地で有名な”豆菓子”の店「鎌倉 まめや」で買い物をしましたら、試供品の”雛あられ”を戴きました(写真は撮り忘れました)。

”雛あられ”も中々美味しかったのですが、それよりも当然美味しかったのが”豆菓子”。「鎌倉 まめや」では、全商品が試食出来るので、図々しくも全商品試食させて頂きましたが(笑)、特に美味しかったのが、人気三位の「フランボワーズピーナッツ」

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これは本当にお勧めです。

鎌倉まめやのHPへようこそ 懐かしさに新しさを添えた贈り物

 

そういえば、夏目漱石の好物の一つが、”南京豆の蜜かけ”だったように記憶しております。

漱石と鎌倉も縁の深い土地であります。例えば、漱石円覚寺を訪問したことがあり、それを草枕などの作品に書いております。

 

石段の上で思い出す。昔し鎌倉へ遊びに行って、いわゆる五山なるものを、ぐるぐる尋ねて廻った時、たしか円覚寺の塔頭であったろう、やはりこんな風に石段をのそりのそりと登って行くと、門内から、黄な法衣を着た、頭の鉢の開いた坊主が出て来た。余は上る、坊主は下る。すれ違った時、坊主が鋭どい声でどこへ御出なさると問うた。余はただ境内を拝見にと答えて、同時に足を停めたら、坊主は直ちに、何もありませんぞと言い捨てて、すたすた下りて行った。

夏目漱石草枕」)

 

www.engakuji.or.jp

 

 

さて、鎌倉と言えば、昔小島政二郎川端康成らによって、”鎌倉菓子の会”というものが開かれておりましたことは、以前ブログに書きました。

hontocoffee117.hatenablog.com

 

そのためという訳でもないのでしょうけれど、鎌倉にはお菓子を始め、美味しい食べ物が沢山あります。

 

例えば、江戸川乱歩の作品にも、鎌倉所縁の食べ物が登場します。

作品は、乱歩の長編の代表作の一つであり、作中で展開される独特の芸術論が興味深い「盲獣」。乱歩作品の中でも、特に人気の高いものの一つですが、この作品に、鎌倉所縁の食べ物が出て来ます。

 

鎌倉ハムです。あぶらの多い塩加減上等の、迚もうまい肉です。少しずつ目方が違うけれど、まあ一つ三円は下りませんね。卸値がですよ。(後略)

江戸川乱歩「盲獣」)

 

今ではあまり名前が取りざたされるようなことはありませんが、鎌倉ハムは、一八八七年に創業した、日本で最も歴史あるハム製造会社です。「鎌倉ハム」の”ハム”は、「盲獣」発表の一九三一年には、既に国際的にも評価の高いブランド品でした。

www.kamakura-ham.co.jp

 

偶然にも、鎌倉散歩中に、「鎌倉ハム」を看板に掲げる「一心亭」という店を発見しました。創業一九〇〇年とありますから、こちらも大変伝統のある店ですね。

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予算の関係で、今回は何も購入しませんでしたが、次回鎌倉に行った際には、何か購入したいと思っております。

 

他にもありますが、ひとまずこのくらいで(笑)

 

盲獣 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

盲獣 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

 

 

 

作家とビスケット~夏目漱石を軸として~

本日二月二十八日ビスケットの日です。

これは、全国ビスケット協会により制定されました。一八五四年に水戸藩の萩信之助から依頼を受けた長崎在住の水戸藩柴田方庵によって、一八五五年二月二十八日に日本初のビスケットの製法を書いた文書が、水戸藩に送られたことビスケットの語源が「二度焼かれたもの」であることから、二月二十八日をビスケットの日にしたそうです。

 

柴田方庵 - Wikipedia

 

www.biscuit.or.jp

 

そういえば、日本が長い鎖国を解いたのが一八五四年です。こうしてみると、ビスケットは、開国を象徴する食品であるとも言えますね。

 

本日はビスケットの日ということで、作家とビスケットについて取り上げたいと思います。

 

夏目漱石

漱石と言えば、既に当ブログでも何度も紹介している通り、日本が誇る甘党文豪の筆頭格です。そんな漱石は、三三歳からイギリスに官費留学します。その留学のエピソードなどを元に書かれた自伝的長編「道草」に、次のような記述があります。

その健三には昼食を節約した憐れな経験さえあった。

(略)
 ある時の彼は町で買って来たビスケットの缶を午になると開いた。そうして湯も水も呑まずに、硬くて脆いものをぼりぼり噛み摧いては、生唾の力で無理に嚥み下した。

官費留学生で、金銭的に余裕がなかった漱石。書簡などにもその苦悩が伺えます。必要に駆られて「昼食の節約」をせざるを得なかった訳です。

しかし、ここで選択するのが、お菓子であるビスケットという所に、甘党文豪としての面を強く感じます(笑)

 

夏目漱石 道草

 

芥川龍之介

漱石門下、”木曜会”の一人であり、現在でも大変人気のある文豪芥川。実は、芥川にも漱石と似たビスケットのエピソードがあります。

芥川の江南訪問記「江南遊記に、次のような記述があります。

やつと霊巌山へ辿り着いて見たら、苦労して来たのが莫迦莫迦しい程、侘しい禿げ山に過ぎなかつた。(略)私は霊巌寺の朽廊に、粛粛たる雨の音を聞きながら、七級の廃塔を仰ぎ見た時、古人の名句を思ふよりも、しみじみ腹の減つた事を感じた。

我我は寺の一室に、ビスケットばかりの昼飯をすませた。が、一応腹は張つても、精力は更に恢復しない。私は埃臭い茶を飲みながら、妙に悲しい心もちがして来た。

 

甘党と言えども、ビスケットだけというのには耐えられぬ、と言った具合で、悲壮感が漂っています(笑)

 

上海游記・江南游記 (講談社文芸文庫)

上海游記・江南游記 (講談社文芸文庫)

 

 (芥川作品に珍しく、青空文庫にないので驚きました。)

 

③内田百閒

しかし、状況が変われば話は別なようで、同じく漱石門下の一人である百閒のビスケットのエピソードは、何とも優雅なものです。百鬼園日録」に、次のような記述があります。

朝の支度は、起きると先づ果物を一二種食ふ。梨や林檎は大概半顆宛、桃は大きくても小さくても一つ宛食べる。桃の身は濡れてゐて辷り込むから食つてしまふのである。それと同時に葡萄酒を一杯飲む。大變貴族的な習慣で聞きなりはいいが、常用の葡萄酒は日本薬局方の所謂赤酒である。問屋からまとめて買ふので一本五十二銭である。

(略)

郵便や新聞を見終る前に、ビスケットを齧つて牛乳を飲む。これで朝飯を終るのである。ビスケットは英字の形をした餘りあまくないのを常用してゐる。アイやエルは劃が少いので口にいれても歯ごたへがない。ビイやジイは大概腹の穴が潰れて一塊になつてゐるから口の中でもそもそする。さう云ふ色色な形を指先で選り分けて摘んで食べる。

百閒がどう弁解した所で、朝から酒を飲むなど貴族趣味を感じざるを得ませんが(笑)

 

ここでの”英字ビスケット”に関する百閒の記述は、中々面白いですね。ビスケットではありませんが、私は給食の時に、アルファベットの形をしたマカロニ入りのミネストローネを食べた記憶があります。百閒ほど明確にではありませんが、形によって、確かに食感の違いのようなものは感じたような気もします。

 

そういえば、本日Twitter岡山県”シガーフライ”というビスケットが話題になっておりました。この「シガー」の由来は煙草であり、その名の通り”シガーフライ”は葉巻の形をしています。

百閒は岡山県の出身で、煙草好きとして有名(ちなみに、漱石も芥川も煙草好きでした)。百閒も、もしかしたら”シガーフライ”を食べていたかもしれませんね。

 

私の「漱石」と「龍之介」 (ちくま文庫)

私の「漱石」と「龍之介」 (ちくま文庫)

 

 

御馳走帖 (中公文庫)

御馳走帖 (中公文庫)

 

 

今回は、漱石と門下生のビスケットエピソードを紹介しましたが、ビスケット好きの作家は他にもおります。代表的なのは、森茉莉でしょうか?

 

ビスケットとクッキー、ついでにサブレの違いはよく分かりませんが(笑)、何となく硬くて歯ごたえの良いのがビスケットであると考えております(クラッカーは甘くないので別枠です)。

まぁ、ここら辺は好みですよね。

 

ちなみに、私はビスケットと言えばたべっ子どうぶつ”ミレービスケット”なのですが、皆さんはいかがでしょうか?

 

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常備しているので、写真があります(笑)

 

 

寒い日には、やはりラーメンでしょう(米澤穂信「激辛大盛」「箱の中の欠落」)

ここしばらく過ごしやすい天候が続いていましたが、今日は急に寒くなりました。野暮用で、隣町まで自転車で向かったのですが、危うく凍え死ぬかと思いました(笑)

 

私は極度の寒がりでして(そして極度の暑がりなのです)、寒い日は暖房を効かせた屋内に引きこもりたいタイプであります。

そういえば、寒い日は、暖房の聞いた屋内でアイスなど、冷たい物を食べるのが最高の贅沢と言う人もいますね。そして、逆もまた然り。凍えるように寒い所で食べる温かい物の魔力は、計り知れないものがあります(笑)

 

温かくて美味しい食べ物など、枚挙に暇がないものですが、その中でも私は、何故か寒い日の”ラーメン”というシチュエーションに、何だか悪魔的な魅力を感じます。常々不思議に思っているのですが……(笑)

 

という訳で、本日は作家の描く”ラーメン”について、取り上げたいと思います。

印象的な”ラーメン”として、例えば、森見登美彦の「猫ラーメンがありますが、これは後日、夜は短し歩けよ乙女の映画公開が迫った時にでも紹介するとしまして(笑)、本日は、森見同様、現在大変人気のある作家、米澤穂信が描く”ラーメン”を取り上げたいと思います。

 

数々のミステリ・ランキングに毎年名を連ね、山本周五郎賞(個人的に、直木賞より信頼しています)、日本推理作家協会賞なども受賞しており、直木賞候補にもなった米澤。代表作としてまず筆頭に挙げるならば、やはり氷菓をはじめとする古典部〉シリーズになるでしょうか。

 

その〈古典部〉シリーズの最新刊、「いまさら翼といわれても」に収録されている「箱の中の欠落」に、実に美味しそうな”醤油ラーメン”が出て来ます。

 

俺の前に、醤油の香りもかぐわしいラーメンが置かれる。麺は細めの縮れ麺、スープは醤油色に澄んでいてチャーシューは二枚、メンマも二枚で、丼の中央には緑も鮮やかな茹でホウレン草がこんもりと据えてある。 

 

スタンダードな醤油ラーメンには変な癖がなく、やや塩気が多いようだが、そこがむしろラーメンを食べたという満足感に繋がっている。ラーメンにホウレン草を入れたことはなかったが、いざ食べてみると、どうしてこれまで入れてなかったのかと思うほど馴染んでいる。そして、これは良いのか悪いのか判断に困る点だが、どういう仕掛けなのかスープがやたらに熱かった。 

 

「醤油色に澄んでいて」というのが良いですねえ(笑)。そして「やや塩気が強い」。最近は健康のために塩分控え目……と言いますが、やはり”ラーメン”にはガツン!としたインパクトが欲しいです(笑)

 

いまさら翼といわれても

いまさら翼といわれても

 

 

オーソドックスな”醤油ラーメン”も嬉しいですが、これでは刺激が足りない!と言う方もいらっしゃるかもしれません。米澤の代表作として、〈小市民〉シリーズも有名ですが、これの二作目夏期限定トロピカルパフェ事件収録の、その名も「激辛大盛」では、主人公とその友人が”タンメン激辛大盛”を食べています。

 

赤いカウンターに、ぼくは肘をついた。厨房では店主がざるに大盛の野菜、ピーマン、にんじん、玉葱、キャベツにもやしを中華鍋にあけた。水分の爆ぜる派手な音が店中に響き渡る。

 

「はいよ、タンメン激辛大盛お待ち!」

……洗面器のようなサイズの丼に、まるでソフトクリームのような円錐状に、野菜がそそり立っている。スープも麺も見えないんですが……。 

 

何となく、巷で有名な蒙古タンメンを彷彿とさせます。間違いなく身体はポカポカ……を通り越して、汗がだらだらになりそうです(笑)

 

〈小市民〉シリーズは、それぞれ「春期限定いちごタルト事件」「夏期限定トロピカルパフェ事件」「秋期限定栗きんとん事件」、そして最新短篇「巴里マカロンの謎」があり、題名から分かる通り、様々なスイーツが出て来て、読んで美味しい、楽しい作品です。

ちなみに私のおすすめは、「夏期限定トロピカルパフェ事件」収録の「シャルロットだけはぼくのもの」。中々に完成度が高い逸品です。

 

夏期限定トロピカルパフェ事件 (創元推理文庫)

夏期限定トロピカルパフェ事件 (創元推理文庫)

 

コミカライズもされているそうです。

 

 明日も最低気温は零度になる予定らしいです。是非”ラーメン”を食べて身体を温めた後は、暖房の効いた屋内で読書……というのは、いかがでしょうか?

 

国分寺「紅」にて、 看板メニュー「紅ラーメンを頂きました。パンチのある具とスープに、主張の強い麺。中々美味しかったです(笑)

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続・村上春樹の作品と食(「騎士団長殺し」にもやはり……!(笑))

 本日二月二十四日、遂に発売されました村上春樹「騎士団長殺し」

折角だからと、当ブログでは昨日、村上作品と食について取り上げました。

 

hontocoffee117.hatenablog.com

 

昨日のブログでは最後、村上作品に”サンドウィッチ”が頻出していることから、もしかしたら「騎士団長殺し」にも”サンドウィッチ”が出て来るのでは……?と書きました。

 

元々私はあまり村上作品が好きではないですし、量も多いので、「騎士団長殺し」を読む予定はなかったのですが、このことがあって、どうしても”サンドウィッチ”が出て来るのか気になって仕方ない。

 

という訳(?)でして、「騎士団長殺し」に”サンドウィッチ”が出て来るのか、そのことを確認するため、書店へ(笑)

 

ただ、発売前から重版がかかっていると言われてましたので、

mainichi.jp

 

もしかしたら売り切れかな~とも思っていましたが、

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普通にありました(笑)。そういえば私の地元は、あまり文学好きな方がいないのか、こういう時売り切れた試しがないです。

 

首尾よく入手出来ましたが、第一部、第二部合わせて1000ページを超える長編作品です。長期戦を覚悟し、食料として”サンドウィッチ”を準備しました。

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準備万端。早速作業に取り掛かります。

 

 

あ、ありました。意外にすぐ出て来てびっくりです(笑)

 

書肆的な話ですが、「騎士団長殺し」は、ねじまき鳥クロニクルなどの過去の村上の長編作品と同様、何章もが連なった構成になっています。

さて、私における最重要事項()である”サンドウィッチ”は、第四章「みんな月に行ってしまうかもしれない」に出て来ました。

 

 

注目の”サンドウィッチ”の中身はと言いますと……”ハムとチーズのサンドウィッチ”でした。

 

 

うん、普通ですね。……いえ、別に問題はないのですけどね?

 

そういえば、”チーズのサンドウィッチ”は、羊をめぐる冒険を始め、村上作品における”サンドウィッチ”の具として中々にポピュラーな気もします。

 

僕はウエイターを呼んでメニューを見せてもらった。オムレツはなかったが、サンドウィッチはあった。チーズと胡瓜のサンドウィッチを注文した。添えものを訊くと、ポテト・チップとピクルスだった。ポテト・チップをやめてピクルスを二倍にしてもらった。

村上春樹羊をめぐる冒険」)

 

羊男はわかったといった風に肯いた。「あんたが行ってしまうとさびしいよ。まぁ仕方がないことだとは思うけどね。ところで、チーズ・サンドウィッチをもらっていいかな?」

「いいよ」

村上春樹羊をめぐる冒険」)

 

 ”チーズと胡瓜のサンドウィッチ”に沢山のピクルス……、私だったら香ばしいものも欲しいですから、”ポテト・チップ”はキープしますかね(笑)

 

ちなみに、「羊をめぐる冒険」ではさらっと書かれるのみですが、”オムレツ”と村上は、実は縁が深い。村上のエッセイ集「サラダ好きのライオン 村上ラヂオ3」「オムレツを作ろう」で、そのことが確認出来ます(それにしても、村上のエッセイは、作品に比べて随分読みやすいですね(笑))。

村上ラヂオ3: サラダ好きのライオン (新潮文庫)

村上ラヂオ3: サラダ好きのライオン (新潮文庫)

 

 

ちなみに、「騎士団長殺し」には、他にも食べ物が出て来ます。私としては、”ラム入りのコーヒー”が気になりました。「コォヒィのブログ」と名乗っているだけあって、コーヒーが好きなんです(笑)

 

”サンドウィッチ”とコーヒーの組み合わせって、結構定番ですよね。実は第四章「みんな月に行ってしまうかもしれない」の”ハムとチーズのサンドウィッチ”にも、コーヒーが添えられています。

 

 

という訳で、村上作品の”サンドウィッチ”シリーズに、新たに「騎士団長殺し」の”ハムとチーズのサンドウィッチ”が追加されたのでした(笑)

 

 

騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

 

 

騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編

騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編

 

 

 

 

村上春樹の作品と食

明日二月二十四日は、村上春樹の新作長編「騎士団長殺し」発売日です。

www.shinchosha.co.jp

 

 

既に重版がかかっているそうです。相変わらず絶大な人気があります。

(※しかし、書店に行ったら普通に陳列されていましたけど……(笑))

 

騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

 

 

騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編

騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編

 

 

 

私はあまり村上作品は好きではないので、今のところ購入予定はありません。それに、「書下ろし二千枚」とあっては、気軽に手も出ませんし(笑)

 

しかし、折角話題になっていることですので、今回は村上と食について取り上げようかと思います。

 

 

ところで、読書中、皆さんは何か食べたり、飲んだりすることをどう思いますか?

私は本を汚したくないので、出来るだけ避けているのですが、例えば長編小説なんかを読んでいる際には、どうしても何か食べたり、飲んだりしたくなります。

 

例えばそうですね……”クッキー”とか。それと、”コーヒー”もあったら嬉しいですね。

 

でも僕はためしにチョコレート・クッキーを皿に盛って出してみた。加納クレタはそれをおいしそうに四個食べた。僕もクッキーを二個食べ、コーヒーを飲んだ。

村上春樹ねじまき鳥クロニクル」) 

 

ちょっと無理やりでしたかね(笑)

作品は、読売文学賞を受賞した長編作品ねじまき鳥クロニクルです(何も関係ないと思いますが、「ねじまき鳥」と聞くと、つい「ドラゴンクエスト」を連想します)。

 

食べやすいとは言っても、”クッキー”を食べるとどうしても手が汚れてしまいます。一々拭くのも面倒くさい……。それでしたら、”ドロップ”などはいかがでしょうか。

 

ポケットからレモンドロップを取り出し、包み紙を開いて口の中に入れた。仕事を辞めたのを機会に煙草をやめたのだが、そのかわりレモンドロップを手元から離せなくなっていた。「レモンドロップ中毒」と妻は言った。

村上春樹ねじまき鳥クロニクル」)

 

 

面白い作品は、ついつい時間を忘れて読みふけってしまうものです。「騎士団長殺し」を読んでいたら、気付いたら真夜中……なんてこともあるかもしれませんね。

こういう時はお菓子だと物足らないもので、かといって真夜中にあまり食べ過ぎるのも気が引けます。そうですね……”サンドウィッチ”などは、最適かもしれません。

 

実は村上作品には、実に多種多様なサンドウィッチが出て来ます。例えば、先ほどから引用している「ねじまき鳥クロニクル」なら、”トマトとチーズのサンドウィッチ”です。

 

僕は台所に立ってパンを切ってバターとマスタードを塗り、トマトのスライスとチーズをはさんだ。そしてそれをまな板の上に載せ、包丁で半分に切ろうとしていたのだ。

村上春樹ねじまき鳥クロニクル」) 

 

デビュー作であり、群像新人文学賞を受賞した風の歌を聴けでは、”レタスとソーセージのサンドウィッチ”です。

 

彼女は裸の まま起き上がり、冷蔵庫を開けて古いパンをみつけだし、レタスとソーセージで簡単なサンドウィッチを作り、インスタントのコーヒーと一緒にベッドまで運んでくれた。

(略)

「芥子はなかったわ。」

「上等さ。」

村上春樹風の歌を聴け」)

 

「1973年のピンボール”椎茸とほうれん草のサンドウィッチ”羊をめぐる冒険野間文芸新人賞受賞)の”チースのサンドウィッチ””チーズと胡瓜のサンドウィッチ”や、豪華なものでは「螢」”ロースト・ビーフ・サンドウィッチ”など、他にも多種多様な”サンドウィッチ”があります。

 

このように、頻繁に”サンドウィッチ”を作品に出す村上ですが、谷崎潤一郎賞受賞作世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランドでは、”サンドウィッチ哲学”のようなものも披露しています(笑)

 

 私はソファーに対するのと同じようにサンドウィッチに対してもかなり評価の辛い方だと思うが、そのサンドウィッチは私の定めた基準線を軽くクリアしていた。パンは新鮮ではりがあり、よく切れる清潔な包丁でカットされていた。とかく見過されがちなことだけれど、良いサンドウィッチを作るためには良い包丁を用意することが絶対不可欠なのだ。どれだけ立派な材料を揃えても包丁が悪ければおいしいサンドウィッチはできない。

村上春樹世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」)

 

ちなみに、この場面で「私」が食べているのは、”キュウリとハムとチーズのサンドウィッチ”で、後の文章を読むと、”マスタード”、”レタス”、”マヨネーズ”も入っていることが伺えます。

 

”サンドウィッチ”の多種多様性は、”サンドウィッチ”という料理の自由性に因していると思います。つまり、パンさえあれば、中身は冷蔵庫の残り物で大丈夫な訳ですから、これは、夜食に大変都合が良い(笑)

 

 

もしかしたら「騎士団長殺し」にも、”新作サンドウィッチ”が出てくるかもしれません。内容より、むしろそちらが楽しみな気もしています(笑)

 

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装丁は好きなのですが、内容は……(笑)

 

志賀直哉と小林多喜二と”蟹”

本日二月二十日は、志賀直哉の誕生日であり、小林多喜二の命日です。

 

一見関係のなさそうな両作家ですが、実は書簡での交流、そして昭和六年には、奈良県志賀の家に、小林は訪問、滞在しています。

 

実は、小林は志賀の作品の愛好者でありました。小林の初期の作風、例えば、全集の第一巻などに収録されている作品を見ると、プロレタリア文学の趣は全くなく、人道主義的な作品であったり、「愛」をテーマにした作品が目立つことが分かります。

 

それに、そもそも私小説プロレタリア文学は、隣接した文学ジャンルであると考えられます。プロレタリア文学も作者の体験、思想を基に作られることが多いですし、私小説も単なる事実の記述ではありません。

 

と、まぁ文学についての話はこれくらいにして(笑)、今回は、そんな志賀と小林の食を、小林の代名詞蟹工船に合わせ、”蟹”について紹介します。

 

 

まずは、小林からです。

しかし、残念(?)なことに、「蟹工船」には”蟹”を食べる場面が出てこない。成程、当然と言えば当然で、プロレタリアに”蟹”を食べる権利は与えられていなかった訳です。

では、そんなプロレタリア食べていたものは、一体何だったのでしょうか?

 

箸では食いづらいボロボロな南京米に、紙ッ切れのような、実が浮んでいる塩ッぽい味噌汁で、漁夫等が飯を食った

小林多喜二蟹工船」)

 

「一万箱祝」を兼ねてやることになり、酒、焼酎、するめ、にしめ、バット、キャラメルが皆の間に配られた。 

小林多喜二蟹工船」)

 

「酒」は日本酒を意味し、他のアルコール飲料とは区別されるのが、当時の常ですから、「酒、焼酎」となっています。

「紙ッ切れ」の様な具は、油揚げですかね?それとも干からびた大根?それに、「にしめ」の具材も気になります。

ただ確実なのは、あまりにも酷い食事である、という事ですが……。

 

 

さて次は、志賀に移りたいと思います。

志賀と食と来れば、勿論思い起こされるのは“寿司”……「小僧の神様」の“寿司”かと思います。全く関係ないですが、「小僧の神様」を読むたびに、寿司チェーン店の小僧寿しを連想するのは、私だけでしょうか?(笑)

 

志賀の“蟹”についての記述は、「痴情」という作品に出て来ます。この作品は俗にいう志賀の〈浮気もの〉の一つ。

そう、志賀は意外に破天荒な自由人で、褒められないことを多々やってのけているのです(笑)


「痴情」において、“蟹”は、浮気相手の女の形容に使われています。

 

女には彼の妻では疾の昔失はれた新鮮な果物の味があつた。それから子供の息吹と同じ匂ひのする息吹があつた。北國の海で捕れる蟹の鋏の中の肉があつた。これらが總て官能的な魅力だけといふ點、下等な感じもするが、所謂放蕩を超え、絶えず惹かれる気持を感じてゐる以上、彼は猶且つ戀愛と思ふより仕方なかつた。そして彼はその内に美しさを感じ、醜い事をもみにくいとは感じなかつた。

 

蟹の肉は白くて美しく、つややかな光沢をはらんでおります。「北國」という所に志賀のこだわりを感じますね。さぞかし美しい女の肉体が想像されます。

 

 

“蟹”の事を考えていたら、無性に食べたくなってきましたので、スーパーに行きました。
鮮魚売場になかったので、缶詰売場を確認した所、安いものでは三百円しないものもありましたが、高いものでは二千円を超えていて、びっくりしました(笑)。

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勿論、購入したのは一番安い「まるずわいがにほぐしみ」です。

 

“蟹”を食べている最中は無言になると言いますが、私としては、それよりも何よりも、値段に無言……という感じですかね。

 

 

森鷗外の饅頭茶漬けを食べる

 本日二月十七日は森鷗外の誕生日です。

hontocoffee117.hatenablog.com

 

既に森鷗外の食についてのエピソードは紹介しました。

 

折角なので、何か食べよう……と思いましたが、果物は高いし、魚も、特に鰻も高い。シャンパンなんて論外……となると、残されたのは饅頭茶漬けのみ(笑)

 

まぁ、私自身、自他ともに認める(?)甘党です。それに、いつか食べてみたいと思っていましたから、良い機会と言えば良い機会。饅頭茶漬けを作ることにしました。

 

ただ、前回の記事で書いたように、葬式饅頭が手に入りませんし、そもそも私は、実物を見たことがありません。しかし、森茉莉によれば「ふつうのお饅頭の五倍」とありますから、ここで「ふつうのお饅頭」を使っては見栄えがしない。

 

考えた結果、あんまんで代用することにしました。五倍あるかは分かりませんが、これなら「ふつうのお饅頭」よりは、間違いなく大きいです。

 

という訳で、材料は以下の通り。

 

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お茶が溢れたら困るので、ご飯は丼によそいました。大体茶碗一、五杯分くらいの量です。

 

さて、次はあんまんを八つ割にしてご飯に……という所で、アクシデントが発生しました。

 

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あんまんの中のあんこは、ペースト状で非常にゆるいので、とてもじゃないですが八つ割に出来ません(笑)

六つ割で断念。手がべとべとになりました……。

 

気を取り直して。これに熱々のお茶をかけます。

 

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お茶漬けの添え物には、漬物が定番。茉莉によれば、鷗外は茄子や白瓜の漬物が好きであったとのことですが、家には大根のべったら漬けしかなかったので、こちらで代用します。

 

完成しました。間違いなく鷗外の誕生日効果でしょう。何だか美味しそうに見えます

 

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食べてみましたが、別に食べれない味ではありませんでした。まぁ類似品にお汁粉がありますから、予想通りと言えば予想通り(笑)

お汁粉に比べて、お茶をかけているため、さっぱりしているのが特徴でしょうか?ただ、だるだるになったあんまんの皮がやや不快でしたね(笑)

 

皮の堅い、粒あんの饅頭であれば、もっと美味しくなるかもしれません。二回目があるかは謎ですけど(笑)