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コォヒィの文学小話

都内大学に通う国文学生が、自身の読書の記録を中心に、「本」に関する話題を書いています。

夏目漱石門下はカステラが大好き?

相変わらずブログの更新が覚束ないです(笑)

一か月以上のご無沙汰になってしまいました。何とかしたいものです……。

 

さて、本日四月二十日は、内田百閒の命日です。これは通称「木蓮忌」と言いまして、百閒の「木蓮や塀の外吹く俄風」という句に由来します。

 

それにしても、文学忌というのは不思議なもので、例えば江戸川乱歩の命日は「柘榴忌」と言い、これは乱歩の「柘榴」という作品に由来するわけですが、この「柘榴」の評判は決して高いものではありません。

百閒にしましても、他に有名な作品は沢山あります。

 

文学忌がどのように命名されるのか、これ、以前から気になっているのですが、謎のままです(笑)

 

さて、百閒と言えば、夏目漱石の門人の一人。

漱石については過去に何度か取り上げています。例えばこの記事など。

hontocoffee117.hatenablog.com

 

ここでは漱石の「こころ」の「チョコレートを塗った鳶色のカステラ」を紹介しています。

 

漱石とカステラ……そういえば、漱石門下にはカステラ好きで有名な芥川龍之介がいますね。

百閒も漱石門下の一人で、芥川と親交がありました。百閒には芥川について書いた文章が幾つもあり、次のような本も出ています。

 

私の「漱石」と「龍之介」 (ちくま文庫)

私の「漱石」と「龍之介」 (ちくま文庫)

 

 

そんな百閒ですが、実は彼にもカステラについて書いた文章があります。

百閒が入院した際に、お見舞いの品としてもらったカステラについて書いたものです。

 

平べったい木の箱であって、洋服屋が誂えの洋服を入れて来る函を二つ合わせたよりもっと広い。蓋をあけて見たら、中はカステラで一ぱいに詰まっているので驚いた。

内田百閒『船の夢』

 

お見舞い品だからと相手が気を遣ったのでしょうが、過ぎたるは及ばざるがごとし。百閒はこのカステラを「不気味」と評しております(笑)

 

 そういえば、今流行りの「夜は短し歩けよ乙女」の森見登美彦の作品にも、印象的なカステラが出てきますが、これは後日、なるべく早くまとめて、公開しようと思います(笑)

作家と天ぷら①ふやけた衣のうまさ……

約1週間ぶりの更新となってしまいました。最近少々ばたばたしておりまして、出来る限り2,3日に一度は更新を、とは思っているのですが(笑)

 

さて、3月23日は、日本を代表する食通、北大路魯山人の誕生日です。その他、「天才と狂人の間」で直木賞を受賞した杉森久英服部達、遠藤周作らとともにメタフィジック批評を提唱した村松剛なども、この日に生まれております。

 

杉森も、実は食に関する本を書いております。そもそも、杉森で最も有名な本は、「天皇の料理番」でしょうか(笑)

天皇の料理番 (上) (集英社文庫)

天皇の料理番 (上) (集英社文庫)

 

 

服部は〈第三の新人〉に対して、同時代人として最も適切な批評を行った人物ですので、〈第三の新人〉に興味のある方は、一度お読みになることをお勧めします。

われらにとって美は存在するか (講談社文芸文庫)

われらにとって美は存在するか (講談社文芸文庫)

 

 

 

さて、今回は魯山人と食について紹介しようと思いますが、食通で有名な魯山人(中でも納豆の話など)ですので、食に関する文章の多い事、どれにしようかと目移りしてしまいます(笑)

 

ですので、何かとっかかりはないかと少々調べたところ、毎月23日は、どうやら天ぷらの日であるとか。

元は7月23日に制定されていたそうですが、現在では毎月の記念日となっているそうです。

www.soba-udongyoukai.com

 

 

そういえば、先日国文学生の聖地、神保町に行きました。

神保町で天ぷらと言えば、私が直ぐに思いつくのは、「はちまき」「いもや」の二軒です。丁度、「はちまき」の方向に用事があったので(しかし食べる時間はありませんでした、無念です)、せめてと店舗の写真を撮ってきました。

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「はちまき」と言えば、何といっても江戸川乱歩ゆかりの店……、店の前に置かれていた名刺にも、しっかりとその旨が書かれています(笑)

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話がそれました(笑)

さて、魯山人の天ぷら話として、「料理メモ」、そして「てんぷら茶漬け」を紹介します。

 

まずは「料理メモ」から。こちらは「料理メモ」の名の通り色々なレシピが書いてありまして、その一つとして天ぷらが出て来ます。

 

*材料、種第一。えびが多いが、えびは養殖でなく天然のもので大きなものは不可。大きいのは見かけだおし。一匹七、八匁か、それ以下。
*揚げたて第二。てんぷらは揚げてすぐ食べなくては種がよくても味は落ちる。
*油第三。種がよくても油がまずくては不可。

*油は胡麻の古い貯蔵品が味がこなれていていい。

 

ちなみに、食べ方としては、「てんぷらに新鮮なだいこんおろし、これにしょうゆをかけて食べれば俗なだしに優る」と述べております。

 

ここで魯山人は「だし」を否定し「しょうゆ」を推している訳ですが、個人的には疑問が(笑)。というのも、「しょうゆ」って、中々主張の激しい調味料です。天ぷらの味わいなど吹っ飛んでしまうのでは……?と、思います(笑)

 

さて、お次は「てんぷらの茶漬け」です。魯山人って何故か茶漬けの話が多いんですよね(笑)。

 

揚げたてのてんぷらを茶漬けにするのはもとより差支えないが、本来、てんぷらの茶漬けは古いてんぷらの利用にある。 昨日の残りのてんぷらだとか、一旦、冷え切ったものを生かして食う食い方である。それにはまず火鉢に網を載せ、一旦、てんぷらを火にかける。いくぶん焦げができるくらいに火をあてる。それを熱い飯の上に載せ、塩を適宜にかけるのである。

(略)

ただ、ここに注意すべきは、てんぷらの茶漬けは甘いものを嫌うが故に、てんぷらのつゆをかけてはならぬ。必ず生醤油か、塩をかけるべきである。

 

こちらは非の打ちどころがありませんね(笑)。ただ、個人的には、少しだけ山椒をふりたいですかね。

 

さて、揚げたての天ぷらの衣は軽やかで、小気味が良い。サクサクと食べるのは何とも乙なものですが、タイトルで述べた通り、天ぷらそば、天丼、天むす、そして「天ぷらの茶漬け」のように、つゆや出汁を吸い込んで、ふやけた天ぷらの味わいも、また格別なものです。

理想としては、揚げたてをそのまま食べる際の衣は軽く、天ぷらそばなどつゆや出汁を吸い込ませることが前提の場合には、厚い衣の天ぷらであって欲しいです。衣がはがれて浮いている……なんてことがあると、少し興ざめしてしまいますから(笑)

 

魯山人「料理メモ」「てんぷらの茶漬け」は、青空文庫で読むことが出来ますので、よろしければどうぞ。

北大路魯山人 料理メモ

北大路魯山人 てんぷらの茶漬け

作家と海老フライ

本日3月16日は、作家の三浦哲郎の誕生日です。三浦は1960年に「忍ぶ川」芥川賞を受賞し、その後も「拳銃と十五の短編」など、優れた作品を残しております。

この「忍ぶ川」は、”つまらない”と揶揄されがちな芥川賞においても中々の名作です(ところで、芥川賞作品には何だか”川”や”河”が印象的な作品が多数あるような気がします)。

 

忍ぶ川 (新潮文庫)

忍ぶ川 (新潮文庫)

 

 

その他、「タイムスリップ・コンビナート」芥川賞を受賞した笙野頼子、「廃墟に請う」直木賞を受賞した佐々木譲も、本日が誕生日です。

 

さて、実は三浦の作品には、多くの印象的な食の描写が出て来ます。有名なのは、「とんかつ」でしょうか。寺に入門した子供と一年振りに再開した母親、そして宿の主人の風貌を、”とんかつ”で極めて具合よく表している佳品です。

さて、「とんかつ」は教材にもなっています。三浦の作品は癖がなく、何より感情描写が豊かでありますから、採用しやすいのでしょう。

 

今回は、三浦の作品から、同じく教材にもなっている「盆土産」に描かれている”えんびふらい”、つまり”海老フライ”をご紹介します。

 

ところで、”海老フライ”を描いた文章というのを、私は「盆土産」の他に知りません。その意味でも貴重ですが、何より、この”海老フライ”の描き方、実に見事と言うほかありません。

 

揚げたてのえびフライは、口の中に入れると、しゃおっ、というような音を立てた。かむと、緻密な肉の中で前歯がかすかにきしむような、いい歯ごたえで、この辺りでくるみ味といっているえもいわれないうまさが口の中に広がった。

三浦哲郎「盆土産」)

 

さて、久々に鎌倉の話を。

日本には数々のご当地グルメがありますが、鎌倉のご当地グルメ”鎌倉丼”なるものがあります。これは”海老フライの卵とじ丼”らしく、何故”鎌倉丼”と呼ぶかと言えば、昔鎌倉では大量の海老が獲れたからとのこと。

hamarepo.com

 

三浦「盆土産」、何故か全文公開しているサイトがありました。短篇なので、宜しければどうぞ。実に”海老フライ”欲求を刺激してくれる作品であります(笑)

『盆土産』

 

ちなみに、「盆土産」は以下の文庫本に収録されております。

冬の雁 (文春文庫)

冬の雁 (文春文庫)

 

 

文学者とサンドイッチ

本日3月13日サンドイッチの日です。これは、”3”に”1”が挟まれていることから制定されたそうです。

ちなみに、日本にはもう一日”サンドウィッチの日”がありまして、それは11月3日です。こちらはサンドイッチチェーン店「神戸サンド屋」(神戸屋と関係はあるんですかね?)が制定してもので、サンドイッチの生みの親として有名なサンドウィッチ伯爵(第4代サンドウィッチ伯ジョン・モンタギュー)の誕生日であり、”11(いい)3(サンド)”の語呂合わせから制定されたそうです。

d.hatena.ne.jp

 

 

そういえば、サンドイッチとサンドウィッチ、果たしてどちらが正しいのかということについてしばし(?)話題になりますが、これはどちらでも良いそうです

要は”カンマ”か”コンマ”か、”ビニル”か”ビニール”かみたいなものらしいです(情報源は「NEVERまとめ」ですが……(笑))。

matome.naver.jp

 

 

まぁ3月13日を”サンドイッチの日”とする上では、サンドイッチの方が都合が良いですかね(笑)

 

さて、先日村上春樹の作品にはよくサンドイッチが出て来ると書きました。

hontocoffee117.hatenablog.com

 

 

そして勿論(笑)、「騎士団長殺し」にも出て来ました。

hontocoffee117.hatenablog.com

 

 

「騎士団長殺し」に出てきたのは”ハムとチーズのサンドウィッチ”でした。

そういえば、村上はサンドウィッチと書くみたいですね。

 

さて、今日はサンドイッチの日ということで、村上以外の文学者とサンドイッチに関する話をしようかと思います。

 

一人目は、詩人の草野心平です。今ではあまり読まれなくなってしまった詩人かもしれませんが、非常にユーモラスかつユニークな詩を作る人で、私の好きな詩人の一人です。

例えば、このような詩があります。

 

 

 

草野心平「冬眠」

 

嘘じゃないですよ。本当にこれだけです(笑)

 

まぁ、勿論これは手遊びのような詩でしょう(私は大好きですが)。もっと重量感のある詩も沢山書いております。

 

さて、この草野、実は食通として名高い。何せ、天下の講談社文芸文庫から出ている草野の作品は、その草野の食に関する随筆などをまとめた「口福無限」というものです。

しかし、これが傑作なんです。日常食から酒の肴まで、実に幅広く書いてあります。

 

口福無限 (講談社文芸文庫)

口福無限 (講談社文芸文庫)

 

 

そんな食通草野の随筆「ばらサンドイッチ」には、実にユニークなサンドイッチが出て来ます。

 

あやめサンド、ふじサンド、ばらサンド、つつじサンド、そんなサンドイッチはレストランのメニューにはないが私の頭の中にはある。あるだけではあくて私自身が作って食べた経験もある。手っ取り早く言えば、たとえばハムサンドのハムの代わりにあやめや藤の花や、またはレンゲ、ツツジの花びらをはさんだサンドイッチである。

それらは色どりも美しく、味も淡く甘く、そしてサラッとしている。

 

こう書かれると、何だか試したくなりますね……。勿論道端の花を抜いて食べたら腹を壊す危険がありますから、花屋などで購入したもので、ですが(笑)

 

さて、もう一人は、村上同様現代作家で、芥川賞選考委員も務める人気作家川上弘美です。私は川上作品はあまり好みではありません。センセイの鞄は嫌いではないですが(笑)

 

川上のサンドイッチは、短編集「ざらざら」の中に出て来ます。しかも、詳しいレシピまで。えらい拘りようです(笑)

 

それで、桃サンドを作ることにした。

オレンジ色の冷蔵庫の野菜室を、あたしは開ける。よく熟れた桃を、そっととりだす。指でもって皮をていねいに剥く。熟れているので、きもちよく、大きく、剥ける。きってゆく。種は残し、たっぷりとおつゆを含んだ果肉が幾片かできたら、こんどは食パンを冷凍室からとりだす。いつものようにトーストしないで、レンジでチンする。

ほどよくふわふわになった食パンに、バターだのジャムだのはいっさいぬらないで、ただきりとった桃をのせる。ぎっしりのせたら、食パンを半分におる。

 

ふわふわの食パンがつゆを吸い込んで、ややゆるくなった所にかぶりつく。想像すると、とてもお腹が空いてきます(笑)。

これは私の解釈ですが、この「桃サンド」は、桃缶の桃ではダメなんでしょうね。

 

ざらざら (新潮文庫)

ざらざら (新潮文庫)

 

 

 

それにしても……、何だか無性に、サンドイッチが食べたくなってきました(笑)

カレーと作家たち⑤愛のカレーライス(阿川弘之「カレーライスの唄」)

 カレーと作家たち④はこちらです。

hontocoffee117.hatenablog.com

 

毎週金曜日はカレーの日です。

最近は他に話題がありましたので更新出来ていませんでしたので、久しぶりの「カレーと作家たち」となります。

 

さて、そもそも何故金曜日がカレーの日なのかと言えば、以前紹介しました通り、海軍で毎週金曜日にカレーが振る舞われた(今もでしょうか?)ためです。

 

海軍に所属していた作家と言えば、芥川龍之介であったり、内田百閒であったり、豊田穣であったり……と、まぁ何人かあげられますが、その海軍での経験を作品にし、そして文学的功績として認められている作家と言えば、阿川弘之をおいて他にはいないでしょう。

 

阿川は志賀直哉門下の一人で、文学史的には〈第三の新人〉に分類されています。遠藤周作にとってのキリスト教小島信夫にとってのアメリカ、吉行淳之介にとっての娼婦、庄野潤三にとっての「家庭」が、阿川における海軍と言えるかもしれません。

 

私は軍記物にはあまり関心がないので、阿川の作品は殆ど読んだことがありません。また、阿川は志賀門下なだけあって、私小説も書いていますが、こちらもあまり良いとは思えません。

阿川の労作「志賀直哉」は、志賀に興味がある人にとっては嬉しい作品ですが、それ以上でも以下でもないかと。

 

しかし、阿川の文学の多様さには、少なからず尊敬の気持ちを抱いております。何とも器用な作家と言いますか……。

今回紹介する「カレーライスの唄」も、そんな阿川の器用さが垣間見える作品です。これは、お正月にドラマでやったりしたら受けそうな作品です。先日解散したSMAP中居正広が主演をしている「味いちもんめ」に近い雰囲気の作品と言えば、分かり易いでしょうか?

 

この作品は、カレーで言えば超甘口の作品で、”バーモントカレー”でもまだ辛い。強いて言うなら”カレーの王子さま”くらいの甘々作品です(笑)

www.sbfoods.co.jp

 

ですが、だからこそ気楽に読めて良いとも言えます。こういった味わいは、最近の大衆文学にはないものですね。

 

「カレーライスの唄」は、現在ちくま文庫版が最も入手しやすい媒体であるかと思われます(ちくま文庫は、獅子文六「てんやわんや」「コーヒーと恋愛」であったり、三島由紀夫「命売ります」であったりと、こういった著名作家の大衆物を売り出すのが巧いですね)。

カレーライスの唄 (ちくま文庫)

カレーライスの唄 (ちくま文庫)

 

 

しかし、今回は講談社文庫版を入手しましたので、こちらで読みました。講談社文庫版では、上下巻構成となっています。

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さて、作中で主人公六助とヒロイン千鶴子(これって阿川佐和子はモデルなんですかね?(笑))が開店するカレー屋「ありがとう」のウリは、カレーの真骨頂である”辛さ”です。作品に登場する作家大森先生は、このカレーを次の様に評しております。

 

「なにしろこの店のカレーは、おそろしく辛い」

と、大森先生は書いていた。

「食べ終わって、店を出て電車に乗ったころ、まだハアー、ハアーッと口の中に辛さが残っているが、同時に、そのころになって何とも言えぬ美味しさが感じられて来る。『ありがとう』のカレーの辛さには、ふたりの若い経営者のまごころがこもっている。にんにくを豊富に使い、始めはそれが不評を買うのではないかと心配だったというが、このごろ、この店のカレーの味を認める常連が次第にふえて来ている」

阿川弘之「カレーライスの唄」

 

ところで、皆さんはカレーに何かトッピングを付けたいと思いますか?

トッピングで有名なのは、”ココ壱番屋のカレー”でしょうか。カレー単品ではなく、トッピングでカレーをカスタマイズすることが前提となっているカレーです。

 

カレーのトッピングの定番と言えば、やはり豚カツだと思います。しかし、私としましては、カレーのトッピングで一番嬉しいのは、実はコロッケです(笑)カツカレーも美味しいとは思いますが、何だか一体感がない。その点コロッケは、非常に良く馴染んでくれますから。

 

さて、海軍カレーは何種類かありますが、その中でも有名なのは、やはり”横須賀海軍カレー”でしょう。通常あまりお目にかかりませんが、「ポンパドウル」というパン屋で、この”横須賀海軍カレー”を気軽に、そして安価に食べることが出来ます。

 

最近ではコンビニのパンも美味しくなってきましたが、カレーパンはまだ暫くは、パン屋には敵わないんじゃないか……と、ここのカレーパンを食べるたびに思ってしまいます(笑)

 

勿論金曜日以外も売っていますので、よろしければどうぞ。

商品のご紹介|横浜元町で生まれた焼き立てパンのお店 ポンパドウル

 

 

安部公房と食

昨日三月七日安部公房の誕生日でした。同日誕生日の作家には、「普賢」や「焼跡のイエス」、「紫雲物語」などで有名な石川淳夏目漱石門下の小宮豊隆、「猫は知っていた」で女流推理作家の先駆け的存在となった仁木悦子などもおります。

 

安部の作品、正直私はあまり好みではありません(笑)。しかし、師匠的存在の石川の小説は割合嫌いではない(師弟というだけで並べるのも変ですが)。

しかし、安部に関しては若干の思い出がありまして、と言うのも、私が国文科に進学することに決めた理由の一つが、高校の授業で読んだ「棒」(「棒になった男」)に魅せられたからなんです。今でも「棒」は巧い小品だと思っております。

 

友達・棒になった男 (新潮文庫)

友達・棒になった男 (新潮文庫)

 

 

石川に関しては、これは大学に入学してから読みました。芥川賞を受賞した「普賢」の饒舌態、ちょっとくどすぎるきらいもありますが、捨てがたい魅力を有しております(ただ、饒舌態を用いた作品をということなら、私は宇野浩二の諸作品をお勧めしますが)。

 

さて、安部に話を戻しますと、安部は今でも比較的読まれている作家ながら、あまり素顔のようなものは明らかではないように思われます。

これは、安部の文壇における立ち位置(と言っても、小島政二郎らの様に嫌われていた訳ではなく、まぁ自身で距離をとっていたため)によるものと思われます。

 

ただ、やはり人気作家ですから、幾らか情報は、Wikipediaに掲載されています(国文生としましては、情報源、執筆者の分からない情報を紹介することには、やや抵抗があるのですが(笑))。

安部公房 - Wikipedia

 

しかし、どうやらWikipediaには、安部の食については何も記載されていないようです。そうきましては、このブログの出番でしょう(笑)

 

Wikipediaにも載っていますが、安部は山口果林という人物と愛人関係にありました。この山口が、安部の死後から大分経った二〇一三年に、安部公房とわたし」という本を出版しました。中身は、まぁ題名通りです(笑)。

 

さて、つまりこの本は安部の私生活面が色々書かれている訳でして、当然食の話も出て来ます。例えば、山口によれば、安部は”生ガキ”を次のように称したとか。

 

十一月、紀伊国屋ホール、安部公房原作・演出による「棒になった男」に研修生として参加することになった。(略)当時、ホールと同じ階にあった会員制クラブでのスタッフ会議にも同席する。その後に、食事に誘われるようになった。(略)紀伊国屋書店近くの寿司屋「銀八」、伊勢丹会館の上にあったカクテルラウンジ。生まれて初めて食べた物も多い。エスカルゴ。エビのカクテル。「女性器に似ている」などとドッキリするような言葉を口にしながら、安部公房は美味しそうに生ガキを食べていた。

 

シュルレアリスムの使い手のくせに、下ネタのレベルが中学生なことは置いておきましょうね(笑)。ここから、どうやら安部は”生ガキ”や、海鮮が好きだったと伺えます。

 

さて、こちらは割合有名かもしれませんが、紹介しておきます。

 

小田原のデパートで買い物をするときに安部公房が必ず買うものがあった。「松蔵のスイートポテト」だ。

 

安部の頃は、「松蔵のスイートポテト」は、小田原でしか買えなかったんでしょうか?現在では、日本各地の百貨店等で、比較的容易に入手することが出来ます。

豊かな太陽の恵みと肥沃な土壌で育まれた「さつまいも」の 自然の風味と香りを最大限に活かしたスイートポテトのお店|松蔵ポテト

 

安部公房とわたし」は、失礼な言い方になりますが、得体の知れない安部の様々な顔を伺える中々楽しい一冊です(ちょっと嘘くさい所もありますが(笑))。

安部の作品と違って、文章は平易ですから、気軽に読めます。よろしければどうぞ。

 

安部公房とわたし

安部公房とわたし

 

 

そういえば、”生ガキ”ですが、牡蠣と言えば広島。実は私、去年広島に行った際に初めて牡蠣を食べたのですが(それまでは食わず嫌いでした)、あまりの美味しさにびっくり。しかし、”生ガキ”よりは”牡蠣フライ”に惹かれました。

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中島敦と食①と、おすすめの文学漫画

二〇一三年から連載が始まった朝霧カフカ、春河35による文豪ストレイドッグスが火付け役となり、現在は”文豪ブーム”のようなものが来ていると感じられます。最近話題のもので言えば、DMMのオンラインゲーム「文豪とアルケミストでしょうか。

 

文豪ストレイドッグス」について、私は友人に薦められて、チラッと目を通したに過ぎないため、作品について話せることはないのですが、主人公は、どうやら中島敦をモチーフにした人物であるようです。

 

中島と言えば、やはり、何といっても山月記で有名でしょう。その他には、細田守バケモノの子で用いられた悟浄出世なども有名でしょうか。

山月記」も「悟浄出世」も、中国古典が典拠にある作品です。中島家祖父の代から漢学を研究しており、中島も幼少期より漢学に親しんでおり、相当の知識があったようです。

 

中国文化で筆頭に挙げられるのは、国文生としましては「史記」や「三国志」、「水滸伝」、「聊斎志異」など、中国文学を挙げていくべきなのでしょうけれど……。

やはり、何といっても中華料理ですね(笑)

 

私のイチオシは、ずばり餃子であります。次点で肉まんなど……つまり、点心系が好きです。

ちなみに、私は先日鎌倉に行ったのですが、

hontocoffee117.hatenablog.com

 

鎌倉は”しらす”の有名な土地であるようで、当地では様々な”しらす料理”を食べることが出来るのですが、私が食べた”しらす料理”の一つに、「鎌倉点心」”しらすまん”があります。しらすの風味と塩気がマッチしていて、中々乙な味でございました。

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”しらす”がたっぷりです。

 

話がそれました(笑)

さて、実は中島は、神奈川に大変縁の深い作家です。中島は横浜高等女学校(現横浜学園」)の教師をしていた経歴があります。中島の文学碑も、横浜高等女学校の跡地にあります。

hamabun.dreamside.net

 

中国古典を題材にした作品を書いており、また神奈川、それも横浜に縁が深いと来ましては、中華料理について言及してはいまいか、と考えたくもなります(笑)

 

そして、私の期待通りに、中島は中華料理を題材にした詩を書いておりました。「聘珍楼雅懐」という詩です。

「聘珍楼」と言えば、一三〇年以上の歴史を誇る横浜に本店を構える日本最古の老舗中華料理店です

www.heichin.com

 

「聘珍楼雅懐」は青空文庫にありませんし、短い詩ですので、この場で全文紹介することにします。

 

冬の夜の聘珍と聞けば大丈夫と思へる我も心動きつ
国つ仇と懲し伐つとふ国なれど唐の料理の憎からなくに
うましもの唐の料理はむらぎもの心のどかに食ふべかりけり
白く濃き唐黍スウプ湯気立ちてあら旨げやなうす脂うく
家鴨の若鳥の腿の肉ならむ舌にとけ行くやはらかさはも
大き盤に濛々として湯気立つ何の湯(スウプ)ぞもいざ味見せん
肉白き蟹の巻揚味軽くうまし/\とわが食しにけり
かの国の大人のごとおほらけく食すべきものぞ紅焼鯉魚は
甘く酸き匂に堪へで箸とりぬ今宵の鯉の大いなるかな
甘酢かけて食ひもて行けば大き鯉はやあらずけり未だ饜かなくに
冬の夜の羊肉の匂ふとかげば北京のみやこ思ほゆるかも
いさゝかに賤しとは思へどなか/\に棄てかたきものか酢豚の味も
みんなみの海に荒ぶる鱶の鰭に逢はで久しく年をへにけり

 

様々な中華料理が提供されまして、何とも贅沢な気持ちになれますねぇ(笑)

今日などはまた寒くなってきましたから、湯気の立った「唐黍スウプ」(中華風コーンスープ)なんて、まさに至福かと思われます。

 

 

最後に、”文豪ブーム”に乗り遅れないように(笑)、私が面白いと思っている文学作品を題材にした漫画を紹介します。

作品は片山ユキヲ「花もて語れ」です。小学館ビッグコミックススペシャルより刊行され、既に完結しております。

 内向的で、口下手な佐倉ハナが、朗読を通じて、徐々に変化していく、一種の青春漫画ですが、朗読の観点から文学作品の解釈を示しており、それが大変ユニークなんですね。取り上げられている文学作品も、宮沢賢治、火野葦兵、夢野久作など様々ありまして、またそれが、「花もて語れ」のストーリーとしっかり絡んでいます。読んでいて、実に楽しいですよ。

よろしければどうぞ。

 

花もて語れ(1) (ビッグコミックススペシャル)

花もて語れ(1) (ビッグコミックススペシャル)