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コォヒィの文学小話

都内大学に通う国文学生が、自身の読書の記録を中心に、「本」に関する話題を書いています。

寒い冬にはたまらない!うどんが美味しそうな文学作品(田辺聖子「慕情きつねうどん」)

厳しい寒さが続いております

全国的に厳しい寒さが続いております。最近では京都に雪が降っていました。とても美しい光景だと思いましたが、つまりそれだけ寒さが激しいということですから、犬より猫な自分としましては、外に出ず炬燵で丸くなっていたいというもの……。まぁしかし、そうもいきません。

 

冬は「湯気」に心がときめきます

しかし、食べ物から上がる湯気、これが脳内麻薬の分泌を促進し、食欲を急激に増加させてしまう……、湯気がそのような力を得るのが冬であります。もはやこれは冬の季語にしてしまっても良いくらいであると思わなくもないですが、湯気に関連する言葉で、冬の季語として登録されているのは「湯気立」。これは湯気を立たせ、乾燥を防ぐことでありまして、まぁ冬ならではの光景です。

 

うどんの「白さ」に季節を感じる

例えば夏ですが、暑苦しいのでどうも食欲が湧かないということがよくあります。そんあ時、キンキンに冷やされたうどんは、その白さも相まって実に爽やかで美味しそうに見えるものです。

そして冬の中で、うどんの白さは今度は雪に通じるものとなります。また、温かいうどんから立ちのぼる湯気は、寒さで凍える身体に大変嬉しいものです。

今回は、そんなうどんを美味しそうに描いた文学作品として、田辺聖子「慕情きつねうどん」(『田辺聖子ロマンス劇場② 春情蛸の足』二〇〇一年六月、筑摩書房)を紹介します。

田辺は大阪出身の作家であります。うどんは香川県讃岐うどんのイメージが強いですが、関西地方も実にうどんとの縁深い。小泉武夫という学者がおりますが、彼も『日本の味と世界の味』(二〇〇二年七月、岩波書店)の中で、関西地方のうどんの美味さを指摘しております。そんな関西出身の田辺の書いたうどんが、こちらです。

 

うどんは太めで、かたすぎずふやけすぎず、だしの味がよくしみていていい匂いがする。うどんをひとすじ、ふたすじすすっては、おつゆをすする。

合間に、やわらかい油揚を箸でちぎる。(略)よく煮ふくめられていて、箸の先でちぎれるほど、くたくたに煮いてある。

田辺聖子「慕情きつねうどん」) 

 

この田辺の文章には、きつねうどんの魅力が惜しげもなく書かれてあると思います。何より、こしの強いうどんも良いですが、寒さで震える身体には、出汁が染みてちょっと柔らかくなったうどん方が嬉しい。よく煮かれた油揚げは、嚙んだ際、中から温かい出汁がじゅわっと出てきます。これもまた嬉しい。

 

以上、田辺聖子「慕情きつねうどん」の紹介でした。