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コォヒィの文学小話

都内大学に通う国文学生が、自身の読書の記録を中心に、「本」に関する話題を書いています。

カレーと作家たち③~坂口安吾とカレーライス~

文学 料理

カレーと作家たち②はこちらです。

hontocoffee117.hatenablog.com

 

無頼派とカレー

坂口安吾ライスカレー事件」なるものを御存知でしょうか。練馬区石神井公園にある「中華 洋食 辰巳軒」に、ある日突然安吾ライスカレーを百人前注文したと言う珍事であります。この時「辰巳軒」は、近所の「ほかり食堂」と協力して、何とか安吾の注文をこなしたそうです。何とも商売人魂を感じさせられる話であります。

ちなみに、現在も両店ともに営業を続けられています。私は「辰巳軒」にはいったことがありまして、ばっちりカレーを食べてきましたが、まさに正統派の日本のカレーという印象でございました。時々無性に恋しくなるあの味です(笑)

 

ちなみに、このように石神井に所縁のある安吾は、石神井文士」の一人に名前を挙げられていたようです。他にもたくさんの作家の名前がありました。以下のサイトにあります。

 

www.neribun.or.jp

 

安吾とカレー

ライスカレー事件」を起こした安吾にとって、どうやらカレーは中々印象深い食べ物であったようです。安吾の随筆に「青い絨毯」というものがあります。七北数人によれば、これは戦中に書かれた随筆で、芥川龍之介の従弟である葛巻義敏との思い出が書かれている作品とのことですが(『風と光と二十の私と・いずこへ』二〇〇八年十一月、岩波文庫より)、この随筆の中に、次のような話があります。

 

いったい徹夜というものは壮年健康な時ほど疲労が劇しいようである。近頃は徹夜をしてもさのみ疲れを覚えず徹夜を生活の一部分に心得てしまっているが、あの頃の疲労はひどかった。(略)そうして朝は大概カレーライスの 食卓だったことを忘れない。食欲などは殆どなかっ記憶である。

 

ライスカレー事件」は一九五一年に起こった事件ですので、この随筆より後ということになります。若い頃嫌という程食べたはずのカレーを大量に注文した理由は一何なのか、興味は尽きません(笑)

 

毎週金曜日のカレーの日にちなんで、相変わらずスケールの大きい安吾のカレーに関するエピソードの紹介でした。ちなみに、「青い絨毯」は青空文庫にありますので、よろしければどうぞ。

坂口安吾 青い絨毯