コォヒィの文学小話

都内大学に通う国文学生が、自身の読書の記録を中心に、「本」に関する話題を書いています。

冬の名物”お汁粉”は、作家たちも大好物でありました

一月ももうじき終わりますが、まだまだ寒さは続く様子。

「早く暖かくなってくれよ」と思う反面、こんな時期だからこそ美味しいというものも沢山ありまして、悩ましく思われます。

お汁粉もその中の一つ。冬になると、自販機に並ぶので気軽に買うことが出来ますが、それらがちょっと温いと感じるのは私だけでしょうか(笑)。もうちょっと熱いとありがたいのですが……。

今回は、そんな冬の名物お汁粉が好きだったあの作家を紹介したいと思います。しかしその前に、お汁粉といえば、まず忘れてはならないあの名作について触れたいと思います。

 

織田作之助夫婦善哉

御存知の方が大変多いと思われます、織田の「夫婦善哉大阪難波の法善寺横丁にある”夫婦善哉”という店がモデルとなっており、織田の「夫婦善哉」によって、この店は一躍全国的な有名店となったそうです。

作品には、次のように描かれております。

 

柳吉は「どや、なんぞ、う、う、うまいもん食いに行こか」と蝶子を誘った。法善寺境内の「めおとぜんざい」へ行った。道頓堀からの通路と千日前からの通路の角に当っているところに古びた阿多福人形が据えられ、その前に「めおとぜんざい」と書いた赤い大提灯がぶら下っているのを見ると、しみじみと夫婦で行く店らしかった。おまけに、ぜんざいを註文すると、女夫の意味で一人に二杯ずつ持って来た。碁盤の目の敷畳に腰をかけ、スウスウと高い音を立てて啜りながら柳吉は言った。「こ、こ、ここの善哉はなんで、二、二、二杯ずつ持って来よるか知ってるか、知らんやろ。こら昔何とか大夫ちう浄瑠璃のお師匠はんがひらいた店でな、一杯山盛にするより、ちょっとずつ二杯にする方が沢山はいってるように見えるやろ、そこをうまいこと考えよったのや」蝶子は「一人より女夫の方がええいうことでっしゃろ」ぽんと襟を突き上げると肩が大きく揺れた。蝶子はめっきり肥えて、そこの座蒲団が尻にかくれるくらいであった。 

 

関西のぜんざいは、関東でいう田舎汁粉、つまりお汁粉のこと。「夫婦善哉」にある「めおとぜんざい」もお汁粉です。ちなみに”夫婦善哉”は今でも営業を続けておりまして、話題のぜんざいも、インターネットから購入することが出来るようです。

 

芥川龍之介「しるこ」

明治を象徴する文豪夏目漱石は、言わずと知れた甘党男子でございますが、その門人である芥川龍之介も並々ならぬ甘党振りでございました。芥川は随筆「しるこ」に、次のように書いています。

 

 ……(略)紅毛人たちは「しるこ」の味を知つてゐない。若し一度知つたとすれば、「しるこ」も亦或は麻雀戲のやうに世界を風靡しないとも限らないのである。帝國ホテルや精養軒のマネエヂヤア諸君は何かの機會に紅毛人たちにも一椀の「しるこ」をすすめて見るが善い。彼等は天ぷらを愛するやうに「しるこ」をも必ず――愛するかどうかは多少の疑問はあるにもせよ、兎に角一應はすすめて見る價値のあることだけは確かであらう。

 

甘党男子の面目躍如といった感じで、お汁粉の魅力を語ってくれております。しかし、何故お汁粉の話をしている最中に天ぷらを出して来たのか……単に芥川が天ぷら好きだったということでしょうか。それともどこかで西洋人の天ぷら好きを見聞してきたのでしょうか?

これは今後調査したいと思います。

 

お汁粉と作家の話はまだありますが、今回は以上となります。ちなみに、織田「夫婦善哉」、芥川「しるこ」は、どちらも青空文庫にありますので、よろしければどうぞ。

 

織田作之助 夫婦善哉

芥川龍之介 しるこ