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コォヒィの文学小話

都内大学に通う国文学生が、自身の読書の記録を中心に、「本」に関する話題を書いています。

言葉が心を温める(綿矢りさ「しょうがの味は熱い」)

文学 料理

今週のお題「冬の寒さ対策」

 

本日二月一日は、作家の綿矢りさの誕生日です。二〇〇一年「インストール」文藝賞を、二〇〇三年「蹴りたい背中芥川賞を、それぞれ最年少で受賞し、大いに話題を集めました。その後、二〇一二年「かわいそうだね?」大江健三郎賞を受賞しております。

人物の感情・感覚を書くところに綿矢の巧みさはあるように思われます。織田作之助候補作となった勝手にふるえてろという作品は、その特徴が色濃く表れており、綿矢作品では、私が一番好きな作品です。

 

今回は、綿矢の作品から「しょうがの味は熱い」を紹介します。

 

さて、日中は日によるものの、明け方や夜はまだ随分冷え込んでおります。こういう時はしっかりと防寒対策をすることはもちろん、身体の中から温めるには、何より温かい物を食べるのが一番です。例えば、今回紹介する「しょうがの味は熱い」の作品名に含まれている生姜は、身体を温めるのに非常に有効的で、鍋に入れても良し、お菓子に入れても良し。最近ではチューブタイプも出ているので、この時期重宝します。

 

作品の内容に移ります。

 

ある寒い夜、交際相手のが寝た後、「しょうがの味は熱い」の主人公の奈世は、絃の自分への愛情が薄れたように感じ、本当は嫌でたまらないのですが、同棲している部屋を離れ一人暮らしに戻ることで、愛情を取り戻そうと考えます。

その後奈世は眠ろうとしますが、部屋は肌寒く、身体を温めないと眠れない。その際奈世が飲むのが、生姜と砂糖の入ったカモミールティです。

 

やかんでお湯をわかすと蒸気が立ちのぼってきて、鼻をしめらせた。沸騰したら紅茶茶碗に注いで、カモミールのティーバッグを溶かす。冷蔵庫を開けてしょうがを取り出し、切り株みたいなしょうがの皮をむき、すり器ですって、砂糖といっしょにカモミールのお茶に混ぜた。(略)清涼過ぎないハーブと眠りを誘う甘い香りのなかに、舌のしびれる確かな存在を感じる。しょうがの味は熱い。

綿矢りさ「しょうがの味は熱い」)

 

温かい紅茶で、奈世の身体は温まります。しかし、絃と離れることを決意した奈世には、何所か寂しい冷たさのようなものが残っている……。そんな奈世を本当に暖めてくれるのが、寝ていたはずの絃から発せられた「いっしょに住むんだろ」という言葉でした。

 

ここにずっと、いっしょに住むんだろ。耳にのこった絃の言葉が、しょうがより何より私を暖める。ようやく眠気がおそってきた。彼の頭に頭を乗せて、二人、よりくっついて眠る。別々のことを考えていたとしても、心は落ちつくべき場所に落ちつき、あとは眠りな心地よく引っ張られてゆく。 

綿矢りさ「しょうがの味は熱い」)

 

心は絃の言葉で「暖め」られ、奈世は心地よい眠りに就くことができました。読んでいる私自身も、このような場面を見ると、何だか心温まります(笑)。

 

温かいものを食べ身体を温めながら、文学の言葉で心を温める。私にとって、これが何よりの寒さ対策です。