コォヒィの文学小話

都内大学に通う国文学生が、自身の読書の記録を中心に、「本」に関する話題を書いています。

二月二日は”麩の日”、”麩”は泉鏡花や室生犀星の愛した故郷の味です

二月二日は麩の日……由来は語呂合わせだそうです(笑)。

 

麩の名産地は日本各地にありますが、中でも有名なのは、やはり石川県金沢市でしょうか。金沢の郷土料理として有名な「金沢おでん」、そして「じぶ」(治部煮)どちらも麩が入っております。

 

寒いこの時期、温かい汁をたっぷり吸いこんだ麩を「ふぅふぅ」と冷ましながら食べるのは格別です(笑)。私は子供の頃は麩があまり好きではありませんでしたが、酒を飲むようになってからは味覚が変わったのか、むしろ好物になりました。

 

さて、金沢と言えば、”金沢三文豪”を御存知でしょうか。「あらくれ」で有名な徳田秋声、「ふるさとは遠きにありて……」の「抒情小曲集」でお馴染み室生犀星、そして今なお熱烈なファンの多い泉鏡花。実は、彼らは全員金沢出身です。

 

そして、鏡花は随筆「寸情風土記の中で、次のように書いています。

 

じぶと云ふ料理あり。だししたぢに、慈姑、生麩、松露など取合はせ、魚鳥をうどんの粉にまぶして煮込み、山葵を吸口にしたるもの。近頃頻々として金澤に旅行する人々、皆その調味を賞す。

 

「寸情風土記」は大正九年七月の作品です。つまりこの頃には既に「じぶ」は金沢の郷土料理として定着していたと考えることが出来ます。しっかり麩も入っていますね(笑)。

 

残念ながら、秋声と犀星の麩に関する記述は未確認なのですが、実は犀星の孫で、現在室生犀星記念館名誉館長を務めている室生洲々子という人が、室生家の味やエピソードを書いた「をみなごのための室生家の料理帳」という本を出しており、この本の中に「じぶ」が紹介されております。犀星が「じぶ」を食していたのは間違いないでしょう。

 

これは私の想像ですが、犀星は「ふるさとは遠きにありて思ふもの そして悲しくうたふもの」と歌っております。このふるさとのイメージの中に、故郷の味として「じぶ」もあったのかもしれません。ぬくもりのある素朴な味わいの「じぶ」は、故郷の味という言葉に非常によく似合うように思います。

 

二月二日”麩の日”はもうじき終わりますが、毎月一度”◯月二日”は来まして、この日も”麩の日”であると言えます(笑)。また、別に日にちにこだわらずとも、寒い時期に麩を使った煮込み料理はピッタリです。最近ではハート形の麩もあるそうですから、バレンタインに使うのもいいでしょう(笑)。

 

今回紹介した鏡花「寸情風土記」、犀星「抒情小曲集」は青空文庫で読めますので、宜しければどうぞ。

 

泉鏡花 寸情風土記

室生犀星 抒情小曲集