読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

コォヒィの文学小話

都内大学に通う国文学生が、自身の読書の記録を中心に、「本」に関する話題を書いています。

節分と文学~「檀流クッキング」による美味しい鬼退治のススメ~

小説 料理 文学

本日二月三日は節分です。

節分と言えば豆まきですが、部屋が汚れてしまって掃除が大変になりますから、我家ではもうしばらくやっていないです(笑)

ただ、やはり少なからず意識はしますので、豆菓子を買ってみたり、良い意味でも悪い意味でも話題の絶えない恵方巻を食べてみたりはしています。

 

 つまり、食べる方で誤魔化す訳です(笑)

 

食べると言えば、本日は料理人……ではなく、作家の檀一雄の誕生日でもあります坂口安吾太宰治と同じ無頼派の一人である檀。小説でも「火宅の人」や太宰治などの伝記を書いておりますが、何と言っても有名なのは「檀流クッキング」という料理随筆でしょう。

例えば、「たったひとりの反乱」や「輝く日の宮」などで有名な丸谷才一は、次のように述べています。

 

邱永漢氏の『食は広州に在り』は名著である。

戦後の日本で食べ物のことを書いた本を3冊選ぶとすれば、これと檀一雄氏の『檀流クッキング』と吉田健一氏の『私の食物誌』ということになろう。

丸谷才一「食通知ったかぶり」) 

 

「檀流クッキング」は開高健など、その他の作家にも大評判の一冊です。残念ながら、節分料理というものは載っていないですが、”檀流”のイワシや大豆料理を紹介します。

 

①イワシの煮付け

……また、イワシ、アジ、サバ等の煮付けの類は、常時冷蔵庫の中にあって、これを取り出しては、副菜にし、酒のサカナにするならわしだ。

檀一雄「檀流クッキング」)

 

檀は日常的に魚の煮付けを食べていたようです。そんな”檀流”鰯の煮付けのレシピは、鍋に潰した生姜、出汁昆布を敷き、その上に鰯を置き、そこに淡口醤油と削切りした梅干しを入れ、酒とお茶を加えながら、醤油の味を調節して煮詰めるというシンプルなもの。

しかし、「お茶」を入れるというのが面白い。檀も原因不明としていますが、この方が美味しく感じると言っています。

 

②大正コロッケ

今から五十年ばかりむかし、大正コロッケというすこぶる珍妙な食べ物があった。手押しの屋台で、町から町を流し売って歩いていたものだが、左様、一個一銭か一銭五厘ぐらいのものだったろう。

檀一雄、同文献)

 

「檀流クッキング」で何といっても有名なのはビーフシチュー、通称”檀シチュー”ですが、この”大正コロッケ”も、そのユニークさから意外に知名度は高いかもしれません。

 

さて、実はこの”大正コロッケ”は、節分料理にうってつけの一品でして、材料はオカラ(大豆)と好みの魚のすり身。大豆と鰯を一緒にとれてしまうという訳です(笑)

 

”大正コロッケ”のレシピは、魚のすり身に、オカラ、葱のザク切り、乾燥桜海老で、つなぎには卵と小麦粉を用いますが、つなぎはあまり多くしない方が良いとしてあります。そして、それらを混ぜ合わせ、小判型に成型して揚げたら完成です。オカラが仕事しますから、意外に充実感のある一品です。

 

 

良く考えれば、大豆や鰯を食べることは、要は身体を豆まきするようなもので、部屋に豆をまくより合理的かもしれませんね(笑)

 

今年も我家はどうやら豆まきはしない様子ですので、”大正コロッケ”をつまみに、心の隅っこで檀一雄の誕生日を祝いながら、美味しく鬼退治をすることにします。