コォヒィの文学小話

都内大学に通う国文学生が、自身の読書の記録を中心に、「本」に関する話題を書いています。

立春の食材”豆腐”を、文豪に語って頂きましょう(笑)

本日二月四日は立春です。そのためという訳でもないでしょうが、最近は寒かったり、風が強かったりしましたのに、今日は比較的暖かく、過ごしやすい感じを受けます。

 

さて、立春の前日、つまり昨日は節分でした。そもそも節分は、その言葉からも見て取れる通り「節を分ける」日でありまして、一年の始まりである春終わりである冬の節目の日です。

豆まきをするのも、一年間積もり積もった厄払いの意味が込められています。

 

さて、昨日はその節分にちなんで、同じく二月三日が誕生日である檀一雄「檀流クッキング」から、節分の食材である鰯や大豆を使った料理を紹介しました。

 

hontocoffee117.hatenablog.com

 

 

なので、本日は立春の食材を紹介しようと思います。

「フードジャーナル」によりますと、節分、立春には”豆腐”を食べる習慣があるそうです。これは、私初耳でした(笑)

 

www.food-journal.co.jp

 

そういえば、正月の食材の代表である”餅”も白いですね。意外な共通点が発見されました。

 

さて、”豆腐”と言えば、あの文豪の泉鏡花の好物として有名です。

それにしても、鏡花は本当に豆腐が好きだったのでしょう。大正十三年二月に、「湯どうふ」という随筆まで書いております。

この随筆の中で、鏡花は次のように書いています。

 

懐手して、肩が寒い。

かうした日は、これから霙にも、雪にも、いつもいゝものは湯豆府だ。

 

しかし、鏡花は潔癖症で有名。見て分かる通り、”豆腐”の「腐」を嫌がり”豆府”と書くくらいです。ですので、湯豆腐も鏡花にかかると、次のようになります。

 

……式の如く、だし昆布を鍋の底へ敷いたのでは、火を強くしても、何うも煮えがおそい。ともすると、ちよろ/\、ちよろ/\と草の清水が湧くやうだから、豆府を下へ、あたまから昆布を被せる。即ち、ぐら/\と煮えて、蝦夷の雪が板昆布をかぶつて踊を踊るやうな處を、ひよいと挾んで、はねを飛ばして、あつゝと慌てて、ふツと吹いて、するりと頬張る。人が見たらをかしからうし、お聞きになつても馬鹿々々しい。
が、身がつてではない。味はとにかく、ものの生ぬるいよりは此の方が増だ。

 

豆腐を煮る際に沸騰させてしまいますと、すが立って、味が落ちますが、鏡花の気持ちは、何となく理解できます。温い豆腐って、何だかぼやっとしていて、あまり好きになれません。

……いやはや、それにしてもこの鏡花の文章は、何とも躍動的で、食欲をそそられます(笑)

 

まだ夜は寒さが残る時期です。鏡花流湯豆腐をほおばり身体を温めながら、お好きな方は是非日本酒をどうぞ。

ちなみに、鏡花も酒が大好きだったそうですが、このことに関して、小村雪岱という人が泉鏡花先生のこと」という文章の中で、面白い話を書いておりますので、ご紹介します。

 

先生の熱燗はこうした生物嫌いの結果ですが、そのお燗の熱いのなんのって、私共が手に持ってお酌が出来るような熱さでは勿論駄目で、煮たぎったようなのをチビリチビリとやられました。
自分の傍に鉄瓶がチンチンとたぎっていないと不安で気が落着かないという先生の性分も、この生物恐怖性の結果かも知れません。

 

つまり、潔癖症がたたって、酒もグラグラ沸騰させないと飲めなかったということです。

やはりここは鏡花に倣いまして、”超熱燗”を楽しむのが良いでしょう。

 

……いえ、それでは風味も何もあったものではありません。温めにして、味わいを楽しむのが乙でしょうか(笑)

 

 

泉鏡花「湯どうふ」と小村雪岱泉鏡花先生のこと」は、青空文庫で読むことが出来ます。よろしければどうぞ。

泉鏡太郎 湯どうふ

小村雪岱 泉鏡花先生のこと