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コォヒィの文学小話

都内大学に通う国文学生が、自身の読書の記録を中心に、「本」に関する話題を書いています。

「沈黙」の遠藤周作の食卓には、思わず”沈黙”してしまいます

現在話題となっている映画「沈黙―サイレンス―」。原作者の名前は遠藤周作です。

 

遠藤は、先日亡くなった三浦朱門と同じく、第三の新人の一人と数えられています。

www.sanspo.com

 

第三の新人”は、他に吉行淳之介安岡章太郎小島信夫などがいます。

私事ですが、実は吉行淳之介小島信夫の大ファンで、この二人は、”第三の新人”の中でも特に優れた作家であると思っております。

 

作品も勿論良いのですが、”第三の新人”は互いに非常に仲が良いので、お互いのことを書いた随筆なども非常に面白い。

実は、三浦にも遠藤について書いた『わが友遠藤周作:ある日本的キリスト教作家の生涯』という本があります。

 

遠藤自身も、”狐狸庵先生”として多くのユーモラスな随筆集を出しておりますので、興味のある方はどうぞ。

ちなみに、その随筆集の一つ「狐狸庵閑話」、この題名の由来は、前掲の三浦の本によれば、「コリャアカンワ」とのことです(笑)

 

「沈黙」のイメージで、お堅い作家であるというイメージを持たれた方もいるかもしれませんが、実は、遠藤はかなりの問題児。エピソードも沢山あって、私としては、遠藤の作品より、そちらの方が面白く感じるくらいです(笑) 

 

 

さて、本日は遠藤の家庭での食事について紹介しようと思います。

 

『わが家の夕めし』という本があります。この本は、有名人の自宅での食事風景を撮影した本なのですが、ここに掲載された遠藤の食卓が何とも寂しいことに、「イワシ 漬物 梅干し ご飯」

 

いえ、別にこれがたまになら、「そういう日もあるか……」と言えるのですが、どうもそうではない。遠藤は次のように書いています。

 

私の家では、晩御飯は漬物のほか一皿の何かと妻から決められているが、今夜は特に梅干しがでた。写真をとられるというので、妻は虚栄心から梅干しを出したのであろうが、平生はこういうゼイタクは許してくれないのです。

遠藤周作「梅干しもゼイタク」)

 

何と、普段はこれよりも質素な食事だというのです。

というより、そもそも「梅干し」を追加されても、元から「漬物」があるので、あまり嬉しくないと思うのですが……。細かいですが、塩分も気になります(笑)。いや、確かに、ご飯は進むでしょうけれど……。

 

ちなみに、この文章には続きがあり、そこには遠藤、そして彼の息子の悲痛な叫びが書かれております。

 

私は時々、息子に冗談まじりに呟く。

「父ちゃんはねえ、一生に一度、ビフテキをうんと食って死にたいんだよ」と。

息子も笑いながら言う。

「ほんとだ。ボクはライスカレーを腹一杯たべてみたい」

しかし、妻は食べものに金銭を浪費するのは愚劣だという考えを平生から持っている。

 

 偶然にも明日は、二月九日で肉の日明後日は、毎週金曜日のカレーの日です。せめて、遠藤父子の哀れな姿を記憶の片隅に留めながら、肉とカレーを美味しく頂こうかと思います。

 

カレーには、福神漬を添えて……(笑)