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コォヒィの文学小話

都内大学に通う国文学生が、自身の読書の記録を中心に、「本」に関する話題を書いています。

安部公房と食

昨日三月七日安部公房の誕生日でした。同日誕生日の作家には、「普賢」や「焼跡のイエス」、「紫雲物語」などで有名な石川淳夏目漱石門下の小宮豊隆、「猫は知っていた」で女流推理作家の先駆け的存在となった仁木悦子などもおります。

 

安部の作品、正直私はあまり好みではありません(笑)。しかし、師匠的存在の石川の小説は割合嫌いではない(師弟というだけで並べるのも変ですが)。

しかし、安部に関しては若干の思い出がありまして、と言うのも、私が国文科に進学することに決めた理由の一つが、高校の授業で読んだ「棒」(「棒になった男」)に魅せられたからなんです。今でも「棒」は巧い小品だと思っております。

 

友達・棒になった男 (新潮文庫)

友達・棒になった男 (新潮文庫)

 

 

石川に関しては、これは大学に入学してから読みました。芥川賞を受賞した「普賢」の饒舌態、ちょっとくどすぎるきらいもありますが、捨てがたい魅力を有しております(ただ、饒舌態を用いた作品をということなら、私は宇野浩二の諸作品をお勧めしますが)。

 

さて、安部に話を戻しますと、安部は今でも比較的読まれている作家ながら、あまり素顔のようなものは明らかではないように思われます。

これは、安部の文壇における立ち位置(と言っても、小島政二郎らの様に嫌われていた訳ではなく、まぁ自身で距離をとっていたため)によるものと思われます。

 

ただ、やはり人気作家ですから、幾らか情報は、Wikipediaに掲載されています(国文生としましては、情報源、執筆者の分からない情報を紹介することには、やや抵抗があるのですが(笑))。

安部公房 - Wikipedia

 

しかし、どうやらWikipediaには、安部の食については何も記載されていないようです。そうきましては、このブログの出番でしょう(笑)

 

Wikipediaにも載っていますが、安部は山口果林という人物と愛人関係にありました。この山口が、安部の死後から大分経った二〇一三年に、安部公房とわたし」という本を出版しました。中身は、まぁ題名通りです(笑)。

 

さて、つまりこの本は安部の私生活面が色々書かれている訳でして、当然食の話も出て来ます。例えば、山口によれば、安部は”生ガキ”を次のように称したとか。

 

十一月、紀伊国屋ホール、安部公房原作・演出による「棒になった男」に研修生として参加することになった。(略)当時、ホールと同じ階にあった会員制クラブでのスタッフ会議にも同席する。その後に、食事に誘われるようになった。(略)紀伊国屋書店近くの寿司屋「銀八」、伊勢丹会館の上にあったカクテルラウンジ。生まれて初めて食べた物も多い。エスカルゴ。エビのカクテル。「女性器に似ている」などとドッキリするような言葉を口にしながら、安部公房は美味しそうに生ガキを食べていた。

 

シュルレアリスムの使い手のくせに、下ネタのレベルが中学生なことは置いておきましょうね(笑)。ここから、どうやら安部は”生ガキ”や、海鮮が好きだったと伺えます。

 

さて、こちらは割合有名かもしれませんが、紹介しておきます。

 

小田原のデパートで買い物をするときに安部公房が必ず買うものがあった。「松蔵のスイートポテト」だ。

 

安部の頃は、「松蔵のスイートポテト」は、小田原でしか買えなかったんでしょうか?現在では、日本各地の百貨店等で、比較的容易に入手することが出来ます。

豊かな太陽の恵みと肥沃な土壌で育まれた「さつまいも」の 自然の風味と香りを最大限に活かしたスイートポテトのお店|松蔵ポテト

 

安部公房とわたし」は、失礼な言い方になりますが、得体の知れない安部の様々な顔を伺える中々楽しい一冊です(ちょっと嘘くさい所もありますが(笑))。

安部の作品と違って、文章は平易ですから、気軽に読めます。よろしければどうぞ。

 

安部公房とわたし

安部公房とわたし

 

 

そういえば、”生ガキ”ですが、牡蠣と言えば広島。実は私、去年広島に行った際に初めて牡蠣を食べたのですが(それまでは食わず嫌いでした)、あまりの美味しさにびっくり。しかし、”生ガキ”よりは”牡蠣フライ”に惹かれました。

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