コォヒィの文学小話

都内大学に通う国文学生が、自身の読書の記録を中心に、「本」に関する話題を書いています。

カレーと作家たち⑤愛のカレーライス(阿川弘之「カレーライスの唄」)

 カレーと作家たち④はこちらです。

hontocoffee117.hatenablog.com

 

毎週金曜日はカレーの日です。

最近は他に話題がありましたので更新出来ていませんでしたので、久しぶりの「カレーと作家たち」となります。

 

さて、そもそも何故金曜日がカレーの日なのかと言えば、以前紹介しました通り、海軍で毎週金曜日にカレーが振る舞われた(今もでしょうか?)ためです。

 

海軍に所属していた作家と言えば、芥川龍之介であったり、内田百閒であったり、豊田穣であったり……と、まぁ何人かあげられますが、その海軍での経験を作品にし、そして文学的功績として認められている作家と言えば、阿川弘之をおいて他にはいないでしょう。

 

阿川は志賀直哉門下の一人で、文学史的には〈第三の新人〉に分類されています。遠藤周作にとってのキリスト教小島信夫にとってのアメリカ、吉行淳之介にとっての娼婦、庄野潤三にとっての「家庭」が、阿川における海軍と言えるかもしれません。

 

私は軍記物にはあまり関心がないので、阿川の作品は殆ど読んだことがありません。また、阿川は志賀門下なだけあって、私小説も書いていますが、こちらもあまり良いとは思えません。

阿川の労作「志賀直哉」は、志賀に興味がある人にとっては嬉しい作品ですが、それ以上でも以下でもないかと。

 

しかし、阿川の文学の多様さには、少なからず尊敬の気持ちを抱いております。何とも器用な作家と言いますか……。

今回紹介する「カレーライスの唄」も、そんな阿川の器用さが垣間見える作品です。これは、お正月にドラマでやったりしたら受けそうな作品です。先日解散したSMAP中居正広が主演をしている「味いちもんめ」に近い雰囲気の作品と言えば、分かり易いでしょうか?

 

この作品は、カレーで言えば超甘口の作品で、”バーモントカレー”でもまだ辛い。強いて言うなら”カレーの王子さま”くらいの甘々作品です(笑)

www.sbfoods.co.jp

 

ですが、だからこそ気楽に読めて良いとも言えます。こういった味わいは、最近の大衆文学にはないものですね。

 

「カレーライスの唄」は、現在ちくま文庫版が最も入手しやすい媒体であるかと思われます(ちくま文庫は、獅子文六「てんやわんや」「コーヒーと恋愛」であったり、三島由紀夫「命売ります」であったりと、こういった著名作家の大衆物を売り出すのが巧いですね)。

カレーライスの唄 (ちくま文庫)

カレーライスの唄 (ちくま文庫)

 

 

しかし、今回は講談社文庫版を入手しましたので、こちらで読みました。講談社文庫版では、上下巻構成となっています。

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さて、作中で主人公六助とヒロイン千鶴子(これって阿川佐和子はモデルなんですかね?(笑))が開店するカレー屋「ありがとう」のウリは、カレーの真骨頂である”辛さ”です。作品に登場する作家大森先生は、このカレーを次の様に評しております。

 

「なにしろこの店のカレーは、おそろしく辛い」

と、大森先生は書いていた。

「食べ終わって、店を出て電車に乗ったころ、まだハアー、ハアーッと口の中に辛さが残っているが、同時に、そのころになって何とも言えぬ美味しさが感じられて来る。『ありがとう』のカレーの辛さには、ふたりの若い経営者のまごころがこもっている。にんにくを豊富に使い、始めはそれが不評を買うのではないかと心配だったというが、このごろ、この店のカレーの味を認める常連が次第にふえて来ている」

阿川弘之「カレーライスの唄」

 

ところで、皆さんはカレーに何かトッピングを付けたいと思いますか?

トッピングで有名なのは、”ココ壱番屋のカレー”でしょうか。カレー単品ではなく、トッピングでカレーをカスタマイズすることが前提となっているカレーです。

 

カレーのトッピングの定番と言えば、やはり豚カツだと思います。しかし、私としましては、カレーのトッピングで一番嬉しいのは、実はコロッケです(笑)カツカレーも美味しいとは思いますが、何だか一体感がない。その点コロッケは、非常に良く馴染んでくれますから。

 

さて、海軍カレーは何種類かありますが、その中でも有名なのは、やはり”横須賀海軍カレー”でしょう。通常あまりお目にかかりませんが、「ポンパドウル」というパン屋で、この”横須賀海軍カレー”を気軽に、そして安価に食べることが出来ます。

 

最近ではコンビニのパンも美味しくなってきましたが、カレーパンはまだ暫くは、パン屋には敵わないんじゃないか……と、ここのカレーパンを食べるたびに思ってしまいます(笑)

 

勿論金曜日以外も売っていますので、よろしければどうぞ。

商品のご紹介|横浜元町で生まれた焼き立てパンのお店 ポンパドウル