コォヒィの文学小話

都内大学に通う国文学生が、自身の読書の記録を中心に、「本」に関する話題を書いています。

作家と海老フライ

本日3月16日は、作家の三浦哲郎の誕生日です。三浦は1960年に「忍ぶ川」芥川賞を受賞し、その後も「拳銃と十五の短編」など、優れた作品を残しております。

この「忍ぶ川」は、”つまらない”と揶揄されがちな芥川賞においても中々の名作です(ところで、芥川賞作品には何だか”川”や”河”が印象的な作品が多数あるような気がします)。

 

忍ぶ川 (新潮文庫)

忍ぶ川 (新潮文庫)

 

 

その他、「タイムスリップ・コンビナート」芥川賞を受賞した笙野頼子、「廃墟に請う」直木賞を受賞した佐々木譲も、本日が誕生日です。

 

さて、実は三浦の作品には、多くの印象的な食の描写が出て来ます。有名なのは、「とんかつ」でしょうか。寺に入門した子供と一年振りに再開した母親、そして宿の主人の風貌を、”とんかつ”で極めて具合よく表している佳品です。

さて、「とんかつ」は教材にもなっています。三浦の作品は癖がなく、何より感情描写が豊かでありますから、採用しやすいのでしょう。

 

今回は、三浦の作品から、同じく教材にもなっている「盆土産」に描かれている”えんびふらい”、つまり”海老フライ”をご紹介します。

 

ところで、”海老フライ”を描いた文章というのを、私は「盆土産」の他に知りません。その意味でも貴重ですが、何より、この”海老フライ”の描き方、実に見事と言うほかありません。

 

揚げたてのえびフライは、口の中に入れると、しゃおっ、というような音を立てた。かむと、緻密な肉の中で前歯がかすかにきしむような、いい歯ごたえで、この辺りでくるみ味といっているえもいわれないうまさが口の中に広がった。

三浦哲郎「盆土産」)

 

さて、久々に鎌倉の話を。

日本には数々のご当地グルメがありますが、鎌倉のご当地グルメ”鎌倉丼”なるものがあります。これは”海老フライの卵とじ丼”らしく、何故”鎌倉丼”と呼ぶかと言えば、昔鎌倉では大量の海老が獲れたからとのこと。

hamarepo.com

 

三浦「盆土産」、何故か全文公開しているサイトがありました。短篇なので、宜しければどうぞ。実に”海老フライ”欲求を刺激してくれる作品であります(笑)

『盆土産』

 

ちなみに、「盆土産」は以下の文庫本に収録されております。

冬の雁 (文春文庫)

冬の雁 (文春文庫)