コォヒィの文学小話

都内大学に通う国文学生が、自身の読書の記録を中心に、「本」に関する話題を書いています。

林檎酒を飲ませてやろうか(太宰治、梶井基次郎の酒)

太宰治に「津軽」という作品があることは有名です。簡単に言えば「津軽風土記」とでも言える作品で、作中の描写は、太宰の眼を通した津軽の様々な面が描かれております。

 

この「津軽」のごく最初の方に、次の様な場面が出て来ます。

 

「リンゴ酒でなくちやいけないかね。日本酒も、ビールも駄目かね。」と、N君は、言ひにくさうにして言ふのである。
 駄目どころか、それはリンゴ酒よりいいにきまつてゐるのであるが、しかし、日本酒やビールの貴重な事は「大人おとな」の私は知つてゐるので、遠慮して、リンゴ酒と手紙に書いたのである。津軽地方には、このごろ、甲州に於ける葡萄酒のやうに、リンゴ酒が割合ひ豊富だといふ噂を聞いてゐたのだ。

 

津軽は林檎で有名な青森県の地域の一つです。”つがる”、”サンつがる”という品種もあります。

 

ここでN君が言うように、太宰には何となく甘い酒は似合いません。ビールや日本酒もやや馴染まず、私としてはウイスキーを呷ってそうだな、という印象があります。

何といっても、太宰は無頼派の代表格ですから(笑)

 

さて、今回の記事のタイトル、実はある詩人の言葉にちなんだものです。

分かりますかね?

 

 

……はい、実はこれ、梶井基次郎の「葡萄酒を見せてやろうか」という言葉をいじったものです。出典は三好達治梶井基次郎」。「測量船」などが有名でしょうか。

 

「冬の日」はさういふ彼の蝕まれた青春、通学に耐へない位の悪い健康状態で書かれた。当時私たちは、麻布の狸穴に、一つ家の二階に、二部屋きりのその二部屋を占領して暮らしてゐた。ある晩彼が唐紙越しに私を呼んだ。

――葡萄酒を見せてやらうか……美しいだろう……

さう言つて、彼は硝子のコップを片手にささげるやうにして電燈に透して見せた。葡萄酒はコップの七分目ばかりを満して、なるほど鮮明で美しかつた。それがつい今しがた彼がむせんで吐いたばかりの喀血だったのは、しばらくして種を明かされるまで、ちょつと私には見当がつきかねた。

三好達治梶井基次郎

 

何とも死の香り豊潤な葡萄酒ですね……そういえば、夏目漱石の末期の水、これも葡萄酒であったそうです。

 

アサヒに酒に”ニッカ アップルワイン”があります。ニッカと言えばウイスキーですが、ウイスキーを開発、販売する以前は、リンゴジュースを製造していたそうで、それが”アップルワイン”の製造に繋がったそうです。

 

甘いですが、ちょっと癖のある味わいで、私は好きです。スーパーなどではあまり見かけませんが、普通に販売しているようです(私はドンキーホーテで買いました)

 

このボトル、素敵ですよね。

 

 

”ニッカ アップルワイン”のホームページによれば、一九三八年九月に誕生したそうですから、太宰が飲んでいても不思議ではありませんね。

 

今回はロック、ソーダ割の二通りで飲んでみましたが、ソーダ割にした方が美味しかったです。基本梅酒などはロックで飲んだ方が美味しく感じるたちでして、我ながら不思議でした(笑)

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太宰治津軽」には、他にも美味しそうな食べ物、美しい風景などが出て来ます。青空文庫にありますので、よろしければどうぞ。

太宰治 津軽