コォヒィの文学小話

都内大学に通う国文学生が、自身の読書の記録を中心に、「本」に関する話題を書いています。

詩人とサイダー(ラムネ)

長らくブログを更新できませんでした。実は私、先日まで教育実習に行っていたものでして……。

正直かなり大変でした(笑)が、本当に貴重な経験になりました。これから教育実習、もしくは来年に教育実習があるぞという方々に、そのことだけは保証できます。

 

さて、作家の中には一時期教職に就いていた、という人物が数多くいます。芥川龍之介中島敦が有名ですが、今話題の宮澤賢治もそのような作家の一人です。

(話題の原因である「宮澤賢治の食卓」は、WOWOWなので私は見ることはできませんが…)

www.wowow.co.jp

 

 ただ、これには原作漫画があるので、そちらは目を通してあります。魚乃目三太は「戦争めし」や「しあわせゴハン」など数多くの著作がありますが、素朴な絵の雰囲気が、実に賢治の印象とマッチしていますよ。

宮沢賢治の食卓 (思い出食堂コミックス)

宮沢賢治の食卓 (思い出食堂コミックス)

 

 

さて、賢治と食と言えば、例えば「永訣の朝」の「アイスクリーム」が有名でしょうが……ただ、これは「兜率の天の食」と改められてしまってるんですよね。個人的にはここは「アイスクリーム」であるほうが良いと思うのですが。

 

作品から離れて賢治自身の食としては、やはり「三ツ矢サイダーと天ぷらそば」が有名でしょう。賢治が愛した「やぶ屋」のホームページに、 宮沢賢治とやぶ屋 という記事があり、詳細を知ることが出来ます。

 

サイダーと言えば、近しいものにラムネがあります。と言うより、私はサイダーとラムネの違いが分からないのですが(笑)、このラムネについて、詩人萩原朔太郎が語っています。

 

ラムネといふもの、不思議になつかしく愉快なものだ。夏の氷屋などでは、板に丸い穴をあけて、そこに幾つとなく、ラムネを逆さにして立てて居る。それがいかにも、瓦斯のすさまじい爆音を感じさせる。僕の或る友人は、ラムネを食つて腹が張ったと言つた。あれはたしかに瓦斯で腹を充満させる。

だがこの頃、ラムネといふ物を久しく飲まない。僕の子供の時には、まだシャンパンサイダといふものがなく、主としてラムネを飲用した。この頃では、もうラムネが古風なものになり、俳句の風流な季題にさへもなつてしまつた。それで僕が上野に行くと、あの竹の臺の休み茶屋でラムネを飲む。それがいかにも、僕を田舎者らしく感じさせ、世間を離れた空の上で、旗のへんぽんたるものを感じさせる。僕はラムネを飲むと、ふしぎに故郷のことを聯想するから。

萩原朔太郎「ラムネ」

 

この朔太郎の文章からも分かる通り、朔太郎は賢治よりも早く生まれ、詩人として活躍していました。実は賢治は学生時代、友人から朔太郎の「月に吠える」を借りて読んでいたこともあるそうです。

 

私はラムネと聞くと、やはり夏祭りを連想します。そして食べるのは、天ぷらそばではなく焼きそばです。特に祭りの焼きそばは、別に美味しい訳でもないのに、時折無性に恋しくなる。朔太郎ではありませんが、この感情というのは、何だか愉快なものです(笑)