コォヒィの文学小話

都内大学に通う国文学生が、自身の読書の記録を中心に、「本」に関する話題を書いています。

文学×教育=豆腐?

奇妙奇天烈なタイトルを付けさせて頂きました(笑)

 

前記事にあるように、私は先日教育実習に行ってきました。

hontocoffee117.hatenablog.com

 

この中で、作家の多くも教職についていたことがあると書きましたが、実は芥川賞受賞者に一人、その生涯の殆どを教職に捧げた作家がいます。その名は長谷健、今では殆ど忘れられた作家となりました、受賞作は「あさくさの子供」と言います。

 

長谷は福岡県出身ですが、浅草で教職についていた時期があり、「あさくさの子供」はその時のことが書かれた作品です。芥川賞にしては特に長いですし、内容も大学の教職の授業で学ぶ理論がそのまま書かれているようで、正直あまり完成度の高い作品とも、面白い作品であるとも言えませんが、日本における教育文学の貴重な足跡の一つです。

 

さて、実は作者である長谷の命日が非常に面白い。世にいう文学忌というやつですが、何と長谷の文学忌は「豆腐忌」といいます(笑)

 

豆腐は長谷健の好物でしたが、師範学校時代に肋膜を患ったこともあり、健康を回復させるための一つの健康食として愛用したようです。

「長谷健文学碑と豆腐忌」堤輝男

 

好物にちなんでつけられた文学忌って、他に例はあるんでしょうか(笑)

豆腐が健康食というのにも何だか……突っ込みどころが満載ですが、非常に印象的なことは確かです。

長谷についての詳細はこちらにあります。

文学と教育のかけ橋―芥川賞作家・長谷健の文学と生涯

文学と教育のかけ橋―芥川賞作家・長谷健の文学と生涯

 

 

さて、教育と文学として有名な話に、灘高校中勘助銀の匙」の授業があります。一時期ニュースでも話題になっていました。

〈銀の匙〉の国語授業 (岩波ジュニア新書)

〈銀の匙〉の国語授業 (岩波ジュニア新書)

 

 

銀の匙」はやや冗長な感もありますが、描写も良く、追想小説として中々の佳品です。作者中勘助漱石門下の一人、と言ってもあまり木曜会に顔は出していなかったようです。これは岩波文庫で何とも言えない存在感を放つ(笑)「迷路」の作者野上弥生子と同様です。

 

そんな中勘助の「銀の匙」に、大変美味しそうな豆腐料理が出てきます。

 

そこにはお手づくりの豆腐がふるえてまっ白なはだに模様の藍がしみそうにみえる。姉様は柚子をおろしてくださる。浅い緑色の粉をほろほろとふりかけてとろけそうなのを と とつゆにひたすと、濃い海老色がさっとかかる。 

食べる描写も秀逸なんですよ。

それをそうっと舌にのせる。しずかな柚子の馨、きつい醤油の味、つめたくすべっこいはだざわりがする。 それをころころと二、三度ころがすうちにかすかな澱粉性の味をのこして溶けてしまう。

 

これは手作りの豆腐で、スーパーやコンビニで売っている安い豆腐とは味わいが違います。冷奴を食べるなら絶対豆腐屋の豆腐というのが私の考えですが、中々良い豆腐屋というのも少なりました。むしろスーパーでちょっと奮発した豆腐の方が美味しかったり……という思いも、最近あります(笑)

 

じめじめして、随分遅くなりましたが梅雨の天気がやってきております。こんな時にはさっぱりとした冷奴が、一層美味しく感じられます。