コォヒィの文学小話

都内大学に通う国文学生が、自身の読書の記録を中心に、「本」に関する話題を書いています。

とろろ昆布で熊を倒す

昨日8月29日はゲリラ豪雨に悩まされた一日でした。

昨日の雨と関係あるのかは知りませんが、現在台風15号が日本に接近しているそうです。

www3.nhk.or.jp

 

台風と言えば、繰り返しになりますがコロッケです(笑)。もう今年何度食べたか分かりませんが、「コロッケの唄」の男性のように嫌になるなんてことはありませんので、当然食べる予定です。

 

しかし、事前に分かっている雨ならばともかく、ゲリラ豪雨には本当に勘弁してもらいたいもの。

実際、昨日も雨宿りがてらドトールに入ることになりました。

以前雨宿りでカフェやファミレス……と書きましたが、私はもっぱらカフェ派で、そしてスタバよりドトール派です(笑)

 

hontocoffee117.hatenablog.com

 

雨と言えば、三島由紀夫に「雨のなかの噴水」という作品があります。

後期(中期から?)の三島はいわゆる中間小説的な作品が多く、これもその種の短篇の一つです。

人を食ったような題名ですが、三島らしく計算された短篇という印象で、意外と好きな短篇です。

 

そんな三島の中間小説的な長編作品に、「夏子の冒険」というものがあります。

高校生以下の夏休みは今日で終わりですから、夏にちなんだ作品を……ということで、この作品を選びました(笑)

 

「夏子の冒険」は角川書店主催の「カドフェス2017」の対象本ですし、映画化もしていますから、知っている方も多いかと思います。

www.kadokawa.co.jp

 

簡単に言ってしまえば、「情熱」の欠けた社会で「情熱」のある男性を求める夏子の物語で、三島が当時何を考えていたかがある意味分かりやすい形で表れています。

 

夏子が「情熱」を認めた男性は、恋人の敵である熊を殺すという決意を持った青年です。

さて、男性は熊を殺すことに成功する訳ですが、その熊を倒す直前の出来事が爆笑もの(笑)。何が面白いかというと、夏子の祖母の次のような行動、発言です。

 

祖母が渾身の力をふるって、お椀ごととろろこんぶを熊の鼻面へ投げつけた。 (略)

 

 「とろ……とろろこんぶを、私がぶつけたので、あの、ひるんで、逃げましてございます。 」

 

札幌土産で持ってきて、宿の女主人に渡したとろろ昆布。女主人の手により食卓にあげられた訳ですが、その食卓を熊が襲います(笑)

そこで夏子の祖母がとった行動が、逃げるでも気絶でもなく「とろろ昆布を投げる」だった訳です(ナンテコッタ!)

 

しかも、実際熊がとろろ昆布にひるんで逃げたのかと言えば、そうではないんです。実は一つ目の引用で(略)とした所に、真相が書いてあります。

 

祖母が渾身の力をふるって、お椀ごととろろこんぶを熊の鼻面へ投げつけた。実は、倒れかけた唐紙へぶつかっただけである。唐紙はとろろこんぶごと、四人の上へたおれてきた。

 

はい(笑)。という訳で、そもそもとろろ昆布は熊にかすりもしていなかったという訳です。

 

それにしても、三島の作品は細部まで作りに作られた作品という印象があるのですが、このとろろ昆布の場面、私には何のためにあるのかさっぱり分かりません(笑)

 

三島ファンの方、研究者の方、是非ともご教授を……。

 

夏子の冒険 (角川文庫)

夏子の冒険 (角川文庫)